皮膚科は薄利多売である。
皮膚科診療は単価が低いため、開業皮膚科医はたくさんの患者をみる必要がある。
流行っているクリニックにバイトに行くと半日(3時間)で100人以上の患者を診察しなければならない状況に出くわす。
待ち時間を減らすために、とにかく診療のスピードを上げなければならない。そこで診察の方法を工夫する必要がでてくる。
具体的にどういった方法があるのかを考えた。
病院の待ち時間対策
自分がやっている方法は2つ。
- 診察順序を変える
- 患者のニーズを把握する
①診察順序を変える
皮膚科の診察法について、西山茂夫先生(北里大学名誉教授)は最後に問診をするらしい。
皮膚科的診察はまず発疹の性質とその分布をみ、触ってその深さ・広がりを調べる。
次のステップは、毛、爪、口腔粘膜の観察であり多くの情報が得られる。
次に全身所見をみ、自覚症状に移る。この段階、つまり診察の最後に病歴をとることになる。
病歴は何度聞いても充分ということはないが、その前に発疹をみて考えることが大切である。
(皮膚病診療15(5): 373, 1993)
西山先生が言いたいのは「何の情報も無い状態で皮疹をみて考えることが大事」、「病歴も大事だから最後にしっかり聞きましょう」とういことである。
大学の授業では詳細に患者の話を聞くことが大切だと習う。まずしっかりと話を聞いて、問診→診察→検査という順番が一般的である。
でも皮膚科では「問診→診察」ではなくて「診察→問診」。
これは診察のスピードを上げるテクニックとしても役に立つ。
問診表をチェックして、話を聞く前に最初に皮膚症状をみる。それで診断をつけた後にお話をする。
最初に話を聞くと症状と関係ない話になる場合があるが、この順番だと会話の方向性をある程度絞ることが可能で、診察時間が最短となる。
3時間で100人の診察をする際には、どうしても必要になってくる手法だと思う。
②患者のニーズを把握する
外来の待ち時間を減らしてクレームを減らす方法として、患者のニーズを把握することも大事である。
尊敬するmedtoolz先生(>>臨床で必要なことはすべてmedtoolz先生から学んだ)のブログに、かつてこういう記載があった。
患者さんは「こうしてほしい」イメージを持ってくる。病院に来る患者さんは3種類。
- 何か薬がほしい人
- 検査をしてほしい人
- 話を聞いてほしい人
診察時間を短縮するには、目の前の患者がどのパターンなのかを把握することが重要だという。
これに逆らって道理を説いても、満足感は得られない。時間ばっかりかかって、結局クレームが増えるだけ。
例えば検査をしてほしい人に、検査をせずに一生懸命話を聞こうとしてもあまり意味がない。
「何か薬を…」という人には逆らわないで何か出す。
検査をしてほしい人、あるいは薬がほしい人に対して「必要ありません」と言い切ってしまうのは、その人の人格を全否定するのに等しい行為。
話を聞いてほしい人、こればっかりは覚悟を決めて話を聞く。
クレームが出たり、診察時間が長くなってしまうのは、「患者のニーズ」と「医師の診察」のミスマッチが起こっているからである。
ニーズを踏まえて適切に診察すれば患者満足度を上げることができるし、無駄な時間を省くこともできる。
教科書を読むと「傾聴」という言葉が強調されているが、時間がない中でどうやって満足させるかというのがプロの仕事だと思う。
例によって自画自賛だけれど、自分の外来は評判がいいらしい。施設の人からも褒められるし、患者さんからも「あの人はすごくよく話を聞いてくれる」なんて話されているらしい。でもうちのクリニックでは、患者さん当たりの外来時間は自分が一番短い。傾聴する時間と満足度とは相関しない
「話を聞く」というのはあくまで診療のオプションの一つであって、適切な場面で使わなければあまり役に立たない。
どんなに一生懸命患者さんのことを考えて、医学的に正しい医療を行う努力をしたところで、その「正しさ」を伝える努力を怠れば、その医師は単なる「嫌なやつ」としか思われない。
ただ不要な抗菌薬を希望された場合とかに、どこまで患者に迎合するかという問題は残っているが。
まとめ
これらの方法で待ち時間の対策を行っている。
「話をよく聞いてくれる良いお医者さん」にはなれないかもしれないが、待ち時間が少ないという価値を提供することも大事なんじゃないかと思っている。
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