皮膚科医のおすすめ教科書を紹介するシリーズ第8回目。
今回紹介するのは皮膚科治療の教科書。
治療の教科書として一番初心者向けでわかりやすいと思うのが、中村健一先生の「診療所で診る皮膚疾患」である。
以前紹介した「皮膚のトラブル解決法」と同じ先生の本だ。
この本のポイントは無機質な記載の羅列ではなく、叙述的に書かれているところ。
また百科事典的ではなく、よくある疾患の知識に集中した記載になっている。
本書では百科全書的な編集方針は放棄し、よくある疾患の知識に集中した記載となっています。皮膚科専門医がありきたりな疾患の診療中にイメージしている内容を文書化したものと考えてください。
他に治療の本としては「今日の皮膚疾患治療指針」や「皮膚疾患最新の治療」などがあるが辞書的な本なので通読は難しい。
その点、この本はボリュームはあるが、通読可能な量で一般的な70疾患が網羅されている。
特に患者の多い湿疹に多くのページが割かれているのが特徴である。
70疾患のうち23疾患が湿疹・搔痒症のカテゴリ。「アトピー性皮膚炎かもしれない湿疹」や「あせもかもしれない痒み」など、よく出くわす症状に対する対応が載っていて面白い。
「ウイルス感染症か薬疹か判別できない状態」なんていう、普通の教科書には絶対に載っていないような項目もある。
また患者への説明のコツまで書かれている点も長所である。
この本を一通り読めば、一般外来は問題なくこなせるようになるだろう。
自分は診療には成書は役立たないと思っている。
「診療所で診る皮膚疾患」も成書の部類だとは思うが、叙述的な記載が多く、成書と読み物の中間のような教科書に仕上がっている。
初心者にも、基礎を復習したい専門医にもおすすめ。教科書をなにか1冊買うんだったら、人気の「あたらしい皮膚科」よりもこの本がいいと思う。
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