皮膚科診断の教科書はたいてい原発疹、続発疹の説明から始まる。
しかし結局たくさんの写真が並べられているだけで、どうやって診断につなげたらいいのかは書かれていない。
そこで今回は初学者にオススメの皮膚科診断学の教科書を紹介する。
▼前回の記事▼
誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた
「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」は、皮膚科診断の思考過程が丁寧に解説された教科書である。
(アマゾンの商品ページより)
皮膚科の診断はsnap diagnosisになりがちなので、「大量の写真」と「わずかな説明」という構成の本がほとんど。文章を読んで理解するタイプ教科書は見たことがない。
しかしこの本では症例の数を絞り、一つ一つの皮疹の見かたと考えかたを詳しくに解説する構成になっている。
その分、応用が効くはずであり、大量の写真を掲載しただけの教科書よりも価値のある内容になっていると思う。
原発疹・続発疹の問題点
皮疹の見た目を言語化する「原発疹・続発疹」の概念は皮膚科医にとっては重要である。
ある程度の臨床経験を積むと、無意識のパターンが頭の中に構築されてくる。
しかしそれを無意識のままにしておけば、客観的に検証することはできない。
そこで頭の中にあるものを言葉によって具体化することで、診断能力の向上につながるのである。
しかし非皮膚科医にとってはどうだろうか。
皮疹を見る経験が少ない医師は頭の中にパターンを形成する機会がない。
その場合は言語化の前に、皮疹が生じる病態や組織学的な背景を理解することのほうが重要である。
正確な表現だけを愚直に学んだところで、得られるものは少ないだろう。
ところが初学者向けの教科書でも「皮疹の正確な表現」の重要性ばかりが強調され、診断につながる背景知識の記載はほとんどない場合が多い。
そこに重大な問題点があると思う。
画像診断との類似点
画像診断の分野でも、同じようなことが絵画に例えて表現されている。
絵画を見るときに、「芸術なんだから感じたままでいい」という人がいるが、時代背景などの知識がないとちゃんと感じることができない。
絵画を見るときに、芸術なんだから感じたままでいいっている人がいるけど、あれは違う。
ある程度の時代背景、その絵を描いた状況についての知識がないと、ちゃんと感じることができない。
画像診断においても、見たままを表現する前に、病態や生理学、組織学的などの知識が必要ということである。
それと同じで、理解するために必要な知識は頭に入れておかないとだめだと思う。
その知識は、病態や生理学、組織学的な背景を理解するために知識に近いかな。
「見たままを表現すること」と「診断すること」とを分けないと、読影力がつかないとのこと。
皮膚科診断も同様である。
画像診断のときは必ず、所見(見たままを表現すること)と解釈(診断をしていくこと)とを分けないと、読影力がつかない。
まとめ
「原発疹・続発疹」を用いて皮疹を正確に表現することは重要だが、それだけでは診断はつかない。
しかし見たままを表現さえすれば自然に診断がわかる…と思わせるような初学者向けの教科書は多い。
そこには「努力さえすれば成功できる」という努力教的な胡散臭さがある。
そんな従来の皮膚科診断学の教科書の問題点を指摘した「誰も教えてくれなかった皮疹の診かた・考えかた」。
この本では診断のために必要な背景知識が解説されている。
皮膚科診断に苦手意識をもつ人や、原発疹・続発疹を覚えても診断ができないことに悩んでいた人はぜひ読んでみて欲しい。
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