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蜂窩織炎のガイドライン(IDSA)を読む【NSAIDsを使うエビデンス】

 

蜂窩織炎はよく遭遇する疾患だが、治療法についてしっかり習った記憶がない。

勉強するためにはガイドラインをみることになるが、日本には蜂窩織炎のガイドラインが存在しない。

そのため海外のガイドライン( Infectious Diseases Society of America :IDSA)を読む必要がある。

これを読むと結構勉強になるが、その中でNSAIDsについて記載されている部分がある。

 

抗菌薬以外の治療について

Should Anti-inflammatory Agents Be Used to Complement Antibiotic Treatment of Cellulitis?

Treating the inflammation in these infections by combining antimicrobial therapy with either a nonsteroidal anti-inflammatory agent or systemic corticosteroids significantly hastens clinical improvement compared with antimicrobial therapy alone.

Clin Infect Dis. 2014; 59(2): 147-59.)

 

抗菌薬にNSAIDsまたはステロイドを併用すると治癒までの期間が短縮するという。

さすがにステロイドをルーチンで投与するのはマズいと思うが、NSAIDsは考慮してよいのではないか。

蜂窩織炎に対するNSAIDsのエビデンス

 

これらの抗炎症治療については裏づけがある。

 

蜂窩織炎は培養の陽性率がとても低い。

生検組織の培養陽性率⇒20-30%

 

この理由についての考察。

蜂窩織炎病変部から細菌を分離できる率はかなり低い。

あくまで推測ではあるが、蜂窩織炎発症の引き金を引くのに必要な細菌はおそらく少数でよく、強い炎症症状はこれに対する免疫反応が主体と考えるのが妥当かもしれない。

(MB derma 185 31-35 2011)

 

蜂窩織炎は菌量は少なく、臨床症状は免疫反応が主体であるということ。

となると「抗菌薬のみでは治癒まで時間がかかる」というのは納得できる理屈である。

炎症を抑える治療を併用する必要がある。

 

蜂窩織炎に対して、抗菌薬とNSAIDsを併用した文献によると。

 

4~5日で治癒した患者の割合(Cutis. 75(3):177-80. 2005.

  • 抗菌薬のみ⇒69.7%
  • 抗菌薬+NSAIDs⇒100%

 

このデータからNSAIDsを一緒に投与しておくのはありかもしれない。

(ただし治療期間が短縮しなかったという報告もある Clin Microbiol Infect. 23(4): 242, 2017 )

 

NSAIDsは解熱や鎮痛などの対症療法と思われがちだが、抗炎症作用もあり整形外科疾患(痛風、偽痛風など)では治療薬として用いられる。

NSAIDs使用のもうひとつのメリットは、蜂窩織炎と鑑別が難しい偽痛風にも効果があるということである。どうしてもわからないときは併用するというのも一つの手。

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NSAIDsの使い分け

 

高齢者によく使われるアセトアミノフェン「カロナール」には鎮痛効果はあるが、抗炎症効果はないので、治癒期間の短縮を目的とする場合は不適。

使うなら副作用の少ないとされるCOX-2阻害薬がよいだろう。

COX-2阻害薬は消化管潰瘍の発生率が有意に低いというデータがある。

 

消化管潰瘍の発症率(Alimeny Pharmacol Ther 2013; 346-354.)

  • プラセボ⇒2.7%
  • セレコックス⇒1.4%
  • ロキソニン⇒27.6%

 

ただ腎障害については有意差はないそうなので注意。

 

▼抗菌薬治療についてはこちら▼

>>蜂窩織炎の治療法【皮膚科医の抗菌薬の使い方②】

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