久々に機動戦士ガンダムを観なおすと、キャラクターたちに昔と違った印象をもったことに驚いた。
一人目は、かつては嫌な大人の代表であったブライト艦長。
そしてもう一人は、かつては大好きだった人気の敵キャラ、ランバ・ラルである。
理想の上司としてランバ・ラルを挙げるファンも多い。
1位ランバ・ラル
2位ブライト・ノア
3位ドズル・ザビ
しかし無能な上司であることに悩む今の自分が、ランバ・ラルをどう見たのかをまとめてみたい。
ランバ・ラルとは
宇宙軍司令ドズル・ザビの配下であるランバ・ラルは、ドズルの弟ガルマの仇討ち部隊として地球に派遣される。
新型戦艦のザンジバルと新型モビルスーツのグフが配備され万全の体制。
初戦ではガンダムを圧倒し、「ザクとは違うのだよザクとは」という有名すぎる名言を生み出した。
さらに彼は戦士として優秀なだけでなく、部下からも信頼も厚い。
「わしの出世は部下たちの生活の安定につながる」と、己の出世欲でなく部下の生活の安定が戦闘の目的である。
そのためランバ・ラルの部隊は結束力が堅く人間関係も良好。内輪もめばかりの連邦軍と対比して描かれている。
主人公がアムロが初めて出会う成熟した大人の男。
このあたりが理想的な上司に選ばれる理由なのだろう。
彼の死後、残った部下たちは仇討ち作戦を決行。それだけ慕われていたということである(作戦は失敗して部隊は全滅してしまうが)。
ランバ・ラルの戦い
次にランバ・ラルの戦いの内情について、もう少し詳しく見ていきたい。
ランバ・ラルが派遣された地球は、ドズルと政治的に対立するキシリアの勢力圏である。
政敵の領域内での戦闘は、デリケートな立ち回りが要求される任務。
しかしその辺りに疎いランバ・ラルは、新型戦艦ザンジバルをキシリア側に奪われてしまう。
そのため連邦軍と正面から戦うことが困難となり、ゲリラ戦や奇襲作戦を強いられることになる(それでもかなり善戦するが)。
部下のクランプは悔しさをにじませる。
「しかし、不愉快であります」「せっかくの新造戦艦のザンジバル、なぜあれを?」
(機動戦士ガンダム16話:セイラ出撃)
しかしランバ・ラルが現状に対する不満を言うシーンは一切ない。
自分ではコントロールできない外の環境に支配されない。この状況でいかに行動するかを考える。
7つの習慣で言うところの「主体性を発揮する」を体現している。
とはいえ味方のはずのジオン軍から妨害を受けるという厳しい状況に変わりはない。
善戦むなしくモビルスーツを撃破され、補給のモビルスーツもキシリア側に奪われてしまう。
そのため最後は生身で戦いを挑む羽目になる。
それでも泣き言一つ言わず常に前向きに部下を鼓舞する。
「フフ、この風、この肌触りこそ戦争よ」
(機動戦士ガンダム20話:死闘!ホワイト・ベース)
このようにリーダーの姿勢としては見習うべき点が多い。
しかし彼にはもっとやれることがあったのではないかとも感じる。
リーダーに必要な政治力
ランバ・ラルにもっと政治力があれば、政敵の領土内で上手く立ち回る器用さがあれば。
新型戦艦ザンジバルを奪われることがなく、モビルスーツの補給も受けることができれば、彼自身も部下も死なずにすんだのではないか。
組織内政治もリーダーの仕事。
そう考えると、ランバ・ラルを理想の上司とは言い切れない部分があることも事実である。
自分も管理職になってから、政治力のなさを痛感させられる場面は多い。
優秀な人材の確保や人員の補充などの人事権は自分にはなく、医局に言われるがままである。
そのため人員の補充は見送られ、優秀な人材は別の施設へ送られる。そんなことが続いていた。
しかし与えられた環境で最善を尽くすのが美徳。自分はそう考えて業務に励む。
ところが後に、人事の裏で様々な駆け引きが行われていたことを知った。
政治力のあるリーダーは医局と交渉し、様々な手を打ち、組織力を上げるために最善を尽くしていたのである。
一方の自分は何の政治的なアクションもせず、指をくわえて見ていただけ。
そして組織の戦力は徐々に弱体化していった。
与えられた環境で最善を尽くすだけでなく、環境を整えることもリーダーの重要な仕事…と気づいたときにはもう遅かった。
そんな自分は、政治力のなさから敗北したランバ・ラルに共感してしまうのだった。
(ランバ・ラルと違って実務能力もカリスマ性もない点が致命的だが…)
まとめ
今回はランバ・ラルについて考えてみた。
リーダーには実務能力、統率力が要求される。
しかしそれだけでなく、政治力も必要なのだろう。
管理職なんて給料は増えないのに責任だけ増える損な立場である。
管理職になんかなりたくないという人が多いのは当然のこと。
しかしこの立場に立つ前と後で価値観が大きく変わったのは間違いない(良い方向かどうかわからないが)。
「苦労は多かったが、得るものも大きかった」と思うことで自分を納得させている。
▼ブライト艦長の視点から見るガンダム▼
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