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誰も教えてくれなかった診断学【皮膚科医のオススメ教科書⑩】

 

今回はあまり皮膚科になじみのない教科書を紹介する。

最初に「誰も教えてくれなかった診断学」を読んだときは衝撃を受けた。

 

診断学には興味があって色々な本を読んだが、症状別に鑑別診断が列挙してあるだけのものがほとんど。

またティアニー先生の本も面白いが、達人の技すぎて実際に役立つシチュエーションは意外と少ないと感じていた。

ローレンス・ティアニー

「診断の達人」、「鑑別診断の神様」と呼ばれる、米国を代表する内科医

 

「誰も教えてくれなかった診断学」は実際の鑑別診断ついてはほとんど書かれていない。

診断に至るまでの思考過程を論理的に解説した本である。

 

診断能力を高めるためにはふだん何気なく行っている診断を意識化する必要があり、この本が役に立つ。

 

▼前回の記事▼

疣贅のみかた治療のしかた【皮膚科医のオススメ教科書⑨】
イボ(尋常性疣贅)は外来患者の中でもそれなりの割合をしめているので重要である。 (皮膚の病気は何種類あるのか) しかし根本的な治療法がないことが問題になる。 治らないイボは何をやっても治らない。しか...

 

2種類の診断法

 

診断法には大きく分けて2種類がある。

 

  1. 直感的診断法
  2. 分析的診断法(診断推論)

 

直感的診断法は、疾患の特徴的パターンから瞬間的な「ひらめき」に似た形で認識する診断法。

いわゆるsnap diagnosisである。

 

一方分析的診断法は、鑑別診断のリストを作りそれらをひとつひとつ検証していく診断法である。

みんな無意識に、直感と分析を組み合わせて診断をつけているそうだ。

 

しかし経験の少ない医師にとっては、直感的診断はなかなか難しい。

そこで大事になるのが、この本の柱となる「診断推論」という考え方。

分析的な診断法である診断推論の力は、意識して行うことで鍛えることができるという。

 

診断推論のプロセス

  1. 患者の訴えを適切な医学用語(clinical problem)に変換する
  2. clinical problemに対応する鑑別診断のリストを作る(頻度、重大性の軸から)
  3. 疾患の検査前確率を推測する
  4. 臨床情報(身体所見、検査)を集め、検査後確率を高めて診断を確定する

 

診断推論のキモは鑑別診断のリストの作り方である。

患者の訴えを適切な医学用語に変換できれば、最小限の鑑別診断のリストができる。

例えば漠然と「胸が痛い」⇒「胸痛」とすると、膨大な鑑別診断が上がってくる。

しかし「胸が痛い」⇒「20代男性の胸膜性の胸痛」とすれば、「気胸、肺炎、GERD、胸壁由来の胸痛(骨、筋肉、皮膚)」とかなり絞られる。

 

皮膚科はどうしても直感的診断に偏りがちなので、自分の診断に至るまでの「思考過程」を分析して、診断推論を学んでおくと幅がでると思う。

皮膚科に診断推論を応用するとどうなるか。それは別の記事で解説する。

診断推論を皮膚科に応用してみる【中級者のための皮疹のみかた①】
以前初心者のために皮膚科診断学の記事を書いた。 今回はさらに進んだ中級者向けの皮膚科診断の話。 内科診断学には診断推論という考え方が存在する。 診断推論とは、患者の訴えを聞いたあと鑑別診断を始めるま...

 

オススメ教科書は⑪へつづく

軟部腫瘍の考え方「しこりをみたらどう考える?」【皮膚科医のオススメ教科書⑪】
皮膚科では皮下腫瘍の患者を診ることも多い。 しかし軟部腫瘍は整形外科の領域でもある。 この棲み分けは難しいところで、皮膚科医も整形外科領域の軟部腫瘍についてある程度は知っておく必要がある。 「しこりをみたら...

 

▼オススメ教科書のまとめはこちら▼

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