今回はあまり皮膚科になじみのない教科書を紹介する。
最初に「誰も教えてくれなかった診断学」を読んだときは衝撃を受けた。
診断学には興味があって色々な本を読んだが、症状別に鑑別診断が列挙してあるだけのものがほとんど。
またティアニー先生の本も面白いが、達人の技すぎて実際に役立つシチュエーションは意外と少ないと感じていた。
ローレンス・ティアニー
「診断の達人」、「鑑別診断の神様」と呼ばれる、米国を代表する内科医
「誰も教えてくれなかった診断学」は実際の鑑別診断ついてはほとんど書かれていない。
診断に至るまでの思考過程を論理的に解説した本である。
診断能力を高めるためにはふだん何気なく行っている診断を意識化する必要があり、この本が役に立つ。
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2種類の診断法
診断法には大きく分けて2種類がある。
- 直感的診断法
- 分析的診断法(診断推論)
直感的診断法は、疾患の特徴的パターンから瞬間的な「ひらめき」に似た形で認識する診断法。
いわゆるsnap diagnosisである。
一方分析的診断法は、鑑別診断のリストを作りそれらをひとつひとつ検証していく診断法である。
みんな無意識に、直感と分析を組み合わせて診断をつけているそうだ。
しかし経験の少ない医師にとっては、直感的診断はなかなか難しい。
そこで大事になるのが、この本の柱となる「診断推論」という考え方。
分析的な診断法である診断推論の力は、意識して行うことで鍛えることができるという。
診断推論のプロセス
- 患者の訴えを適切な医学用語(clinical problem)に変換する
- clinical problemに対応する鑑別診断のリストを作る(頻度、重大性の軸から)
- 疾患の検査前確率を推測する
- 臨床情報(身体所見、検査)を集め、検査後確率を高めて診断を確定する
診断推論のキモは鑑別診断のリストの作り方である。
患者の訴えを適切な医学用語に変換できれば、最小限の鑑別診断のリストができる。
例えば漠然と「胸が痛い」⇒「胸痛」とすると、膨大な鑑別診断が上がってくる。
しかし「胸が痛い」⇒「20代男性の胸膜性の胸痛」とすれば、「気胸、肺炎、GERD、胸壁由来の胸痛(骨、筋肉、皮膚)」とかなり絞られる。
皮膚科はどうしても直感的診断に偏りがちなので、自分の診断に至るまでの「思考過程」を分析して、診断推論を学んでおくと幅がでると思う。
皮膚科に診断推論を応用するとどうなるか。それは別の記事で解説する。
オススメ教科書は⑪へつづく
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