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キューブリック映画のマイベスト5はこれだ!

 

伝説的映画監督であるスタンリー・キューブリック。

同じジャンルは二度撮らないと言われ、様々なジャンルの映画を制作している。

そして各ジャンルで名作を残すという偉業を達成している。

今回は解説本の記載をもとに、キューブリック映画のベスト5を選出してみる。

 

1位「時計じかけのオレンジ」

ジャンルはバイオレンス映画。

この映画を模倣した暴力事件が起きたという社会的問題作である。

 

見るに堪えない暴力シーンが続くが、キューブリックが描くと芸術的に感じてしまう。

 

この作品の目的は暴力を芸術的に魅せること。

暴力に様式を与え、バレエのように見せる方法はないかと探した

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

暴力シーンにどこか魅せられてしまう。それによって自分の中の暴力性に気づかされることになる。

偽善的な態度を取るけれど、みんな暴力に惹かれているというのが実情だ

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

そして自分の暴力性に気づいたとき、「凶悪犯にも人権を認めるべきか」テーマがより身近なものとなるのである。

キューブリックの映像へのこだわりと映画のテーマがマッチしたという意味で一番の名作だと思う。

 

2位「シャイニング」

ジャンルはホラー。

究極のホラー映画を目指して作られた作品である。

 

キューブリックはホラーでよく用いられるような「ドッキリ的な驚き」ではなく、「精神的な恐怖」を描くことを目的とした。

キューブリックのアプローチとは、典型的なホラー映画の虚飾を排除することであった。

同じジャンルのものでよく使われる芝居がかった効果を用いなかった。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

この映画の最大の特徴は迫真の演技。

主人公ジャック・トランス役のジャック・ニコルソンの怪演は当然のこと、ジャックの妻役シェリー・デュヴァルの演技も評価が高い。

 

しかしその演技の裏には、NGを出し続けて彼女が精神状態がおかしくなったところを撮影した…という恐るべき事情があるそうだ。

デュヴァルを本当に神経質にさせるため、キューブリックはプレッシャーを与え続けた。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

今の世の中ではあり得ないパワハラがこの映画を作り上げている。

その意味でも価値が高い作品である。

 

また原作を改変したことで、原作者スティーブン・キングを激怒させたことも有名である。

原作は家族想いの主人公(モデルはスティーブン・キング自身)が幽霊に取り憑かれる話だが、映画は狂った主人公の話に改変されている。

それによって幽霊が本当にいるのか分からないように描かれ、精神的恐怖感を増すように演出されている。

そのあたりに注目するとより楽しめるはずである。

 

3位「博士の愛情」

ジャンルはブラックコメディ。

テーマは核戦争で「悪夢のようなコメディにしよう」という目的のもとに制作された。

悪夢のようなコメディーにしようと考えた。

二つの超大国の事故が原因で全人類が滅亡することほどばかばかしいものはない。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

当時、核戦争を風刺映画の題材にすることはタブーだったそうだ。

そこにチャレンジするのがキューブリックのすごいところである。

 

「インポになったのは共産主義の陰謀」という妄想に取りつかれた将軍の暴走によって核爆弾が発射。

会議中なのに愛人との電話に夢中の将軍。世界が滅びようというのに隠しカメラで米軍の総司令部を盗撮するソ連大使。

ヒトラーに仕えてた頃のナチス式敬礼や「総統」「閣下」といった言葉が抜けない元ソ連の博士

 

政治家や軍人たちの、あまりにもくだらないしいやり取りの中で、世界は破滅へ向かっていく。

そしていよいよ人類滅亡が迫ると「優秀な男と美しい女だけ選抜させればいい」と優生思想をぶち上げる。

客観的に見るとバカバカしいが、現実にこんな思想を持つ人たちが少なくないところが恐ろしい。

 

4位「2001年宇宙の旅」

ジャンルはSF。

「大人の鑑賞に耐え得るSF映画を作りたい」という目的で作られた作品。

キューブリックの最高傑作と呼ばれる大作である。

 

キューブリックは「2001年」を言葉ではなく映像や音楽で作りたいと考えていた。

理性よりも潜在意識や感情に訴える。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

「言葉ではなく映像と音楽で作る」という趣旨のもと作られた映像は、今観ても十分に美しい。

 

しかし映画の2/3は映像と音楽のみ。

(もともと挿入されていたナレーション部分をすべてカットしたとのこと)

そのため意味不明な映像作品に仕上がっている。

 

しかし意味不明が故にカルトな人気を博し、解説本(後日発売の小説版)がバカ売れしたそうだ。

監督の意図とは違うだろうが、「あえて説明を省き解説本を売る商法」を確立したという意味で価値が高い作品である。

エヴァンゲリオンの元祖とも言えるのではないか(視聴後の感触もエヴァに近い)。

 

5位「フルメタル・ジャケット」

ジャンルは戦争映画。

ベトナム戦争が題材で「軍隊の機構を描く」というコンセプトのもとに制作された。

キューブリックのベトナム戦争へのアプローチは、軍隊の機構に商店を当てることだった。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

前半の訓練パートと後半の戦争パートに分かれており、前半が特に有名である。

鬼軍曹の伝説的な罵倒の数々。

キューブリックは翻訳にもこだわっており、罵倒の日本語訳をすべて作り直させたそうだ。

 

そして軍曹のしごきで狂っていく兵士のインパクトは絶大である。

 

キューブリックにしてはわかりやすい映画だが、込められたメッセージを読み取るのは難しい気がする。

戦争で人間が狂うのか、それとも本来の残虐性が戦争で露見されるのか。

本当に恐ろしいのは戦争なのか、人間なのか。

どちらを描きたかったのだろうか(個人的には後者だと思うが)。

 

その他の作品

 

6位以下も一応紹介。

 

6位「アイズワイドシャット」

夫婦の性を描いた作品。

ヌードシーンが大量に登場する難解で不思議な映画。

低俗なポルノ映画とみなされ評価は低いが、フリーメイソンの儀式を再現したという映像は魅力的。

 

7位「ロリータ」

created by Rinker
ワーナーホームビデオ

ロリコンの語源となった小説「ロリータ」の実写版。

この映画のポイントは、ハリウッドの厳しい検閲を突破して制作されたこと。

当時のハリウッドでは性的な描写は一切認められず、間接的な表現のみで描かざるをえなかった。

性的メタファーを洗練された巧妙な方法で表現しなければならなかった。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

この時代にこの内容を映画化したことに価値がある作品である。

 

8位「現金に体を張れ」

ジャンルはサスペンス。

時系列を逆転させた構成が当時評判になったそうだ。

今となっては目新しさはないが、タランティーノやガイ・リッチーに影響を与えたという意味で価値がある。

 

9位「バリーリンドン」

ジャンルは歴史映画。

究極の歴史映画を目指して、映像に徹底的にこだわった作品である。

キューブリックにとって、自分が見てきた時代劇映画の映像はどれも満足できるものではなかった。

電気のない18世紀の世界であれば、自然光を使って撮るべきではないか。

(「映画監督スタンリー・キューブリック」より)

 

電気がない時代を正確に再現するため、照明を使わずNASAの特殊カメラを用いて撮影されたそうだ。

正直面白い映画ではないが、キューブリックが異常にこだわった映像には価値があるだろう。

 

まとめ

 

今回はキューブリックの映画をまとめてみた。

歴史的価値も高く、今観ても全然古く感じない作品ばかりである。

解説本片手に一度は観てみることをお勧めする。

 

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