今勤務している病院は赤字。地方の市中病院は軒並み赤字だと思う。
その中でも特に皮膚科は売上(収益)の少ない科である。
見た目で診断がつくことが多いので、検査が少なく外来の保険点数が低い。
手術点数が低い。さらに入院の保険点数も低い。
でも実際には、保険による収益からコストを差し引いた額が病院の利益になる。
(収益) - (費用) = (利益)
実は皮膚科は高額の医療機器や医療材料は使用しないので利益は低くはない。
しかし会議で出てくる数字は収益ばかり。医師一人あたりの収益(稼動額)なんていう指標も出てきて他科と比較されるので不利なのだ。
収益が高くても費用が高く赤字垂れ流しの診療科は非難されないが、費用は低くても収益が低い皮膚科は非難の対象になってしまう。
不採算部門として皮膚科を閉鎖する病院も多い。
今後もこの流れが続いていくと市中病院の皮膚科は閉鎖や人員削減が続くことになる。
そのため我々市中病院の皮膚科医は何とかして見かけの収益を増やさなければならない。
現在2つの戦略が主体になっている。
病院皮膚科医の経営戦略
- 入院患者を増やす
- 高額の薬剤の使用で収益を底上げする
①入院患者を増やす
皮膚疾患は患者数自体は多いので、他の科より外来患者数が増えやすい傾向がある。
しかし厚労省の方針で病院は外来診療では売上が上がらないようになっている。
患者は大病院志向が強いので湿疹や水虫などの軽症であっても市中病院を受診することが多い。
▼患者の大病院志向について▼
でも病院で外来患者を100人診察しても何の評価にもならない。
入院患者1人で外来患者15人分の収益があるため、入院診療で売上を上げていくしかない。
軽症の患者は近隣のクリニックを受診してもらい外来患者数を減らして、その分手術などで入院患者数を増やすのが基本戦略となる。
②高額の薬剤(生物学的製剤など)の使用で収益を底上げする
乾癬に用いられる抗TNFα製剤などは、効果は高いが非常に高価な薬剤である。
▼乾癬と高額薬剤について▼
使えば収益は上がるが、薬剤の購入費用も高いので利益は低く、いくら使っても病院の利益は上がらない。
でもこれらを積極的に使用していけば見かけの収益は上がるので、収益しか見ていない病院からの評価は上がる。
利益が上がらなくても病院経営者が喜ぶというのは歪な構造である。
儲かるのは製薬会社だけ。
医療費の増大が問題になっている中、製薬会社に儲けさせてやるのはしゃくだが、病院が収益という評価尺度を重視するので仕方がない。
③まとめ
こうして皮膚科の生き残りをかけて経営戦略を練っている。
病院の経営戦略を知っておくとクリニックを開業する上でも役に立つと思う。どういう紹介を病院が喜ぶのかを知っておくことは大事である。
でもこれらの戦略も厚労省がシステムを変えてしまえば役に立たなくなる。
あと10年は大丈夫だと思いたいけど。
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