皮膚科では皮下腫瘍の患者を診ることも多い。
しかし軟部腫瘍は整形外科の領域でもある。
この棲み分けは難しいところで、皮膚科医も整形外科領域の軟部腫瘍についてある程度は知っておく必要がある。
「しこりをみたらどう考える?」は整形外科の先生が書いた、皮膚科や形成外科医向けの軟部腫瘍の考え方の教科書である。
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軟部腫瘍の注意点1:画像検査
この教科書では特にMRI検査と適切な生検手技の重要性が強く書かれている。
しこりをみたときの注意点
- 小さいから良性とはいえない
- 昔からあるからといって良性とはいえない
- よく動くから良性とはいえない
- 術前MRIなしに手術をした場合、追加の手術が難しくなる
- 生検は難しい手技である
例えばMRI検査を行わず切除され、術後に軟部肉腫の診断がついた症例。
腫瘍汚染があると判断され尺骨神経、尺骨動脈、屈腱筋の合併切除となった。
整形外科の骨軟部腫瘍ガイドラインでも十分な画像検査が必須とされている。
十分な画像検査をせず腫瘍全体を切除し病理診断を行うことは厳に慎むべきである。
見た目では良悪性の判断はできない。
軟部肉腫の症例。見た目はガングリオンなどの良性腫瘍にも見える。
軟部腫瘍の注意点2:生検手技
生検手技に関してもかなりデリケートである。
軟部腫瘍を専門とする施設の多くは針生検を多用しており、可能な限り腫瘍汚染を少なくして術前診断を行うことにしています。
ガイドラインでも
「生検は腫瘍の手術に精通した医師が行うことが望ましい」
とされていて、不適切な生検により19.3%が治療に影響を受け、3%が不要な患肢の切断を受けたというデータもあるそうだ。
ガイドラインでは「生検時の切開線の方向」や「縫合の幅」、「腫瘍汚染を避けるための生検方法」など細かく規定されていて、安易に生検することすら戒めている。
「しこりをみたらどう考える?」の感想
皮膚科ではどちらかというと「安易に画像検査に頼る」ことを戒めていて、見た目や触診に重きをおいているように思う。
しかし整形外科では、臨床所見で軟部腫瘍の良悪性を判断することは避けるべきであり、できるだけ画像検査を行うことが推奨されている。
明らか粉瘤と分かる腫瘍に対して、全例MRIと生検を行うことは医療資源の問題で慎んだほうがよいだろう。
しかし万が一のために整形外科のデリケートな考え方を知っておくことは大事だと思う。
つづく
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