医療費の抑制のため、厚労省は後発医薬品の使用促進を目指している。
目標値は2020年度末までに数量シェア80%以上だそうだ。
皮膚科でよく使うステロイド外用薬もその対象だが、いくつかの問題点があることも指摘されている。
- 効果が低いかもしれない
- かぶれるかもしれない
- 名前が長すぎる
今回はジェネリックステロイド外用薬の問題点についての話。
外用薬の成り立ち
外用薬は主剤、基剤、添加物の3つからで成り立っている。
(外用薬)=(主剤)+(基剤)+(添加物)
主に薬効を発揮するのは主剤で、ジェネリックも主剤は一緒。
しかし基剤や添加物は異なっていてもよい。
外用薬では基剤や添加物も重要で、これらが先発品との違いにつながってくる。
ジェネリックステロイド外用薬の問題点
- 効果が低いかもしれない
- かぶれるかもしれない
- 名前が長すぎる
1. 効果が低いかもしれない
後発品は同等性試験が行われているので、臨床効果は先発品と一緒のはず。
しかしヒトを対象にした試験は必須ではないので、動物実験のみしか行われていない場合もあるという。
>>局所皮膚適用製剤の生物学的同等性試験ガイドライン策定の背景
気になるデータがある。
リドメックス軟膏のジェネリックであるスピラゾン軟膏とユーメトン軟膏について調べた論文。
- 先発品:リドメックス軟膏
- 後発品:スピラゾン軟膏
- 後発品:ユーメトン軟膏
ステロイド外用薬のジェネリックも主剤の含有量は同じ。
しかし論文では主剤の溶解している濃度が低かったという。
■基剤中に溶解している主剤濃度
リドメックス>スピラゾン、ユーメトン
■皮膚透過性
リドメックス>スピラゾン、ユーメトン
ジェネリックは主剤の濃度が低いことにより皮膚透過性が低く、効果が低い可能性がある。
この差はジェネリックの基剤が先発品と微妙に異なっていることからくるという。
- リドメックス ⇒ ワセリン、流動パラフィン、パラベン
- スピラゾン ⇒ 白色ワセリン、流動パラフィン
- ユーメトン ⇒ 白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル
もしかすると若干効果が低いかもしれないというのは、気になるデータではある。
2. かぶれるかもしれない
ジェネリック外用薬の中には添加物が先発品と異なっているものがある。
特にクロタミトンが含まれているものに注意が必要である。
クロタミトンは稀に接触皮膚炎を起こす可能性がある。
クロタミトンが含まれたジェネリック外用薬
- マイアロン(デルモベート)
- アンフラベート(アンテベート)
- シマロン(トプシム)
- キンダロン(キンダベート)
ジェネリックを使用する場合は、添加物にも注意が必要だ。
クロタミトンが含まれていないものを選んだ方がよいかもしれない。
3. 名前が長すぎる
現在、厚労省はジェネリックの販売名に一般名を用いるように通達している。
例)ロサルタンカリウム錠50mg「日医工」
販売名の記載にあたっては、含有する有効成分に係る一般的名称に剤型、含量及び会社名(屋号等)を付すこと
外用薬でも最近発売されたものでは一般名が用いられている。
しかしこれがクソ長くて分かりづらい。
- リドメックス(1982年)
- ユーメトン(1992年)
- スピラゾン(2008年)
- プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル軟膏0.3%「YD」(2012年)
ステロイドの一般名はとても長いものが多く、これらに切り替えるのにはかなり抵抗がある。
・デルモベート軟膏⇒クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「タイヨー」
・アンテベート軟膏⇒ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル軟膏0.05%「JG」
・キンダベート軟膏⇒クロベタゾン酪酸エステル軟膏0.05%「テイコク」
デルモベートとキンダベートは一般名がよく似ていて紛らわしい。
名前が長すぎて電子カルテに登録できなかったという例もあるそうだ。
>>ジェネリック医薬品80%時代に向けての医療現場の課題
最近は降圧薬などの合剤では長すぎる一般名ではなく、統一した商品名を使用しているようだ。
- プレミネント⇒ロサルヒド
- エックスフォージ⇒アムバロ
- ゾシン⇒タゾピペ
外用薬も同じようになれば普及しやすくなるかもしれない。
まとめ
ステロイドのジェネリックにはいくつかの問題点があり、切り替えしにくい原因になっている。
ステロイド軟膏は20~30年前の薬で、それがいまだに現役だというところにも問題があると思う。
プロトピック軟膏のジェネリックは名前もシンプルである。
タクロリムス軟膏0.1%「NP」
今後はPDE4阻害薬やJAK阻害薬の外用薬などが登場するそうだ。
ステロイド外用薬がオワコンになる時代が来れば状況も変わってくるのかもしれない。
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