ミステリーベスト10のネタバレ感想。
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今回は第二位の綾辻行人「Another」。
個人的には綾辻行人のベストはこの作品だと思っている。
本格ミステリー作家である綾辻行人の作品だけど、学校の怪談をモチーフにした学園ホラー小説でライトノベル的。
アニメ、映画化もされている有名な作品である。
あらすじ
夜見山北中学の三年三組に転校してきた榊原恒一。
恒一はクラスメイトの中に病院で偶然鉢合わせした眼帯の少女、見崎鳴を見つける。しかし何故かクラスメイト達は彼女を“いないもの”として扱っていた。
この小説には前半と後半で2つの謎がある。
- 誰からも見えないクラスメイト見崎鳴の謎
- 3年3組の呪いを解く方法
しかしどちらかといえばストーリー重視の小説になっている。
その中にミステリー的な企みが隠されているところが大きな魅力である。
以下ネタバレ注意
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「Anothe」のネタバレ解説
1. 見崎鳴の謎
クラスメイトの見崎鳴は何故か主人公・恒一以外には見えていない。
この謎を追ううちに、クラスメイトが不可解な死を遂げていく。
- 26年前に死んだミサキという生徒、4月に死んだミサキという中学生
- 恒一だけに見えるミサキというクラスメイト
- クラスメイトの不可解な死
見崎鳴は幽霊なのか?死んだミサキと関係があるのか?
なぜ恒一だけに見えるのか?
クラスメイトの死と見崎鳴との関係は?
綾辻先生の謎の出し方と伏線の張り方が絶妙で、高いリーダビリティがある。
次第に「見崎鳴は存在する」が、「まわりの人達が存在しないかのようにふるまっている」ことがわかる。
それではそれは何故なのか?
ひとつの謎を追ううちに、また新たな謎が浮かび上がるという魅惑の展開。
前半の最後で「3年3組のクラスの一員とその家族が死んでいく」という呪いが明かされる。
呪いを解く方法はクラスの一人をみんなで無視すること。
そのために見崎鳴はいないものとして扱われていた。
第一の謎はこれで解決。
しかしその方法では呪いは解けず、見崎鳴と協力して呪いを解く方法を探す後半へ進んでいく。
2. 3年3組の呪いの謎
後半では呪いのルールが少しずつ明らかになってくる。
呪いの謎を探る場面では冒険小説風でもあり面白い。
3年3組の呪いのルール
- クラスに一人死者が紛れ込んでいる
- しかし記憶が改変されるため死者が誰かを知ることはできない
- 死者が紛れ込むと3年3組の人間とその家族が死んでいく
そして最後に明かされる呪いを解く方法は「死者を殺すこと」。
クラスメイトたちは疑心暗鬼になり、殺し合いに発展してしまう。
このあたりのストーリー展開はパニックホラーで本当に飽きさせない。
最後に残った謎は「誰が死者なのか?」。
そして唐突に死者の正体が明らかになる。
本当にこの…玲子さんが<もう一人>だと?
「死者は玲子さんだった」と明かされたときは、まったく意味がわからなかった。
玲子さんは3年3組と関係ないじゃん!!と。
3. 本当の謎
実は叙述トリックが隠されていて「三神先生=玲子さん」だったというオチ。
そんなミステリー要素が隠されていたなんて想像もしていなかっただけに本当に驚かされた。
読み直してみるとライトノベル的なストーリーの中にも周到に伏線が張り巡らされている。
登場人物たちが死者を知る方法はないが、読んでいる読者には死者が誰かを知るためのヒントがたくさん与えられていた。
しかも「死者が誰なのか」という謎を前面に出すことで、叙述トリックが巧妙に隠されている。
- 26年前、母親が3年3組だった
- 15年前、玲子が3年3組だった
- 2年前、玲子が3年3組の担任だった
15年前の呪いで母親が死に、2年前の呪いで玲子も死亡していた。
色々な謎を散りばめて少しずつ解き明かしていくことで、一番大きなトリックに目を向けさせないようにするという構図は見事としか言いようがない。
これがミステリーの醍醐味と言える。
アニメ版「Another」の感想
Anoterはアニメ版も制作されている。
本格ミステリー作家として有名だった綾辻行人が、もっと広く知られるようになったのはアニメ化がきっかけだったらしい。
この叙述トリックをどうやって映像化するのか疑問だったが、見分けのつきづらいアニメ絵を逆に利用するとは…。
トリックを知っていても、学園ホラーとして普通に楽しめた。
ちなみに映画版は叙述トリック自体が削除されてしまっているとのこと。それでは魅力半減である。
「イニシエーションラブ」はうまく映像化できたんだから…。
まとめ
綾辻行人のミステリーの中では「十字館の殺人」並みの衝撃を味わわせてくれた傑作。
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ミステリーベスト10はなるべく叙述モノは避けるというルールを設定しているが、「Another」は外せなかった。
「なるべく避ける」だからアンフェアではないはず。
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