最近帯状疱疹の発症率が上がっているという。
発症率(/人年) | |
1997年 | 3.61 |
2011年 | 5.00 |
2017年 | 6.07 |
(J Dermatol Sci. 92(1): 89, 2018)
理由は核家族化や小児のワクチン接種で水痘患者との接触が減り、ウイルスに対する抗体が低下しているからだ。
そのため帯状疱疹の遭遇率は高い。
皮膚疾患の患者はドクターショッピングすることが多いが、帯状疱疹患者の転院もよく経験する。
そこでよく言われるのが「薬を飲んだら悪くなった」である。
前日、皮膚科クリニックを受診して帯状疱疹と診断された。
内服薬を処方されたが、症状が悪化したので別のクリニックを受診するというパターンだ。
これを避けるためには治療から皮疹改善までのタイムラグを十分に説明しておく必要がある。
帯状疱疹診療の注意点
帯状疱疹では抗ウイルス薬が効果を発揮するまでに数日かかる。
水疱形成が止まるのは、内服開始から4日目くらいである。
皮疹新生停止までの日数
バルトレックス | アメナリーフ | |
初日 | 0% | 0% |
2日目 | 19.7% | 18.2% |
3日目 | 44.3% | 31.9% |
4日目 | 88.6% | 90.9% |
(アメナリーフ医薬品インタビューフォームより)
そのため内服を始めても数日間は症状が増悪することが多い。
それを患者が「薬を飲んだら悪くなった」と思ってしまうようだ。
抗ヘルペスウイルス薬を投与開始したら、数日以内に必ず受診してもらい、皮疹の状態の変化と副作用の有無を確認する必要がある。
抗ヘルペスウイルス薬は即効性を示す薬剤ではないため、この時点では皮疹はまだ悪化しているのが通常である。
(本田まりこ:抗ヘルペスウイルス薬による治療のポイント)
そこを説明できていないことが多いようで、心配した患者が他院へ転院してしまう。
患者はたいてい薬を飲んだらすぐによくなると思っている。
以前大学病院に勤務していたとき、近くのクリニックで帯状疱疹と診断された患者が「薬で悪くなった」といって夜間に押しかけてきたことがあった。
「入院させてくれるまで帰らない」と居座られて苦労した。
帯状疱疹患者には「薬の効果がでるまで数日かかるので、その間は悪くなる」ということをしっかりと説明しておくことが、藪医者と思われないコツだと思う。
まとめ
しかし十分に説明しているつもりでも、やはり悪くなったといって電話をかけてきたり、翌日受診したりする患者もいる。
知らないうちにウチから転院してしまっている患者も多いのかもしれない。
単純なことなのだが意外と難しいと感じている。
今のワクチンを接種した子供が高齢者になる数十年後には、帯状疱疹はほとんどなくなってしまうと予想されている。
しかし、しばらくは増加していく見込みであり内服の注意点は重要性を増すだろう。
つづく
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