皮膚科の診断はどうしても絵合わせ診断、snap diagnosisに頼りがちになる。
皮疹のみかたを勉強しようと教科書を読んでみると、「原発疹」、「続発疹」の説明から始まりあまり役に立たない。
そこで理論的に皮疹をみる方法を「教科書には書いてない皮膚病変のみかたと勉強法」の記事で紹介した。
今回は、そこからさらに進んだ皮疹のみかたを解説した教科書を読んだので紹介する。
▼前回のオススメ教科書はこちら▼
「皮疹の因数分解・ロジック診断」の感想
著者の北島先生も原発疹・続発疹の概念は実際の臨床ではあまり役に立たないことが多いと書かれている。
皮膚科のほとんどの教科書では発疹は原発疹と続発疹に分けられている。それはそれで意味はあるが、臨床現場で実際に皮疹を診る場合には意味があるとは思えない。
したがって、ここでの皮疹の分類は原発疹・続発疹の視点はあえて入れていない。
この教科書では病理所見に基づく皮疹のみかたのコツが詳細に述べられている。
前回の記事「教科書には書いてない皮膚病変のみかたと勉強法」の分類では表皮+真皮の病変。
【皮疹の原則】
- 表皮に病変がある場合には「ざらざら感」がある。
- 真皮に病変がある場合には「紅斑」となる。
- 皮下脂肪組織に病変がある場合は「しこり」となる。
その中でも接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹はどのように違うのか。またそれらと扁平苔癬、乾癬はどう異なるのか。
一歩進んだ皮疹のみかた
たとえば皮脂欠乏性湿疹と脂漏性皮膚炎の違い。
皮脂欠乏性湿疹では「細胞間浮腫が表皮の深層にとどまる」ため表層の角質は乾いており、乾いた鱗屑が付着する。
一方脂漏性皮膚炎では「表皮の上層にも細胞間浮腫がある」ため角質は浸軟しており、湿った鱗屑がみられる。
病理組織から見た鑑別点
皮脂欠乏性湿疹:点状痂皮がなく、紅斑の外まで鱗屑がある。鱗屑は乾いている(表皮上層には海綿状態がないため)。
脂漏性皮膚炎:点状痂皮がなく、紅斑の周囲に毛嚢性の丘疹がある。鱗屑は湿っている(表皮上層まで海綿状態があるため)。
接触皮膚炎:点状の痂皮が紅斑の中にある(スポットの海綿状態を反映)。
また皮脂欠乏性湿疹と菌状息肉症は、病理学的に同じ表皮の深層に病変を形成するため、ほぼ同一の臨床像をとる。
a:皮脂欠乏性湿疹、b:菌状息肉症
肉眼的には鑑別は難しく皮膚生検が必要となる。
まとめ
このように考えると、かなり深くまで皮疹について理解することができる。
ただし理論は理解できるのだが、後付の理屈のような部分もある。
これを実際の臨床に応用するのはかなり難しそうではある。
ただ皮疹をみる上での新しい視点を持たせてくれる面白い教科書であることは確か。
上級者向けのおすすめ本である。
つづく
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