クリニック開業には、経営や訴訟、自分の健康など数多くのリスクを伴う。
そのため勤務医の年収を超えられなければ開業する意味がない。
データによると勤務医と開業医の平均年収は
- 勤務医の年収⇒1500万
- 開業医の年収⇒2500万
だそうだ。
この数字が本当なのか。
勤務医と比較して、実際の皮膚科開業医の年収がどれくらいになるかを計算すると、下記ようになる。
開業医の年収
1日患者数 × 32万 - 500万
今回はクリニックの収益構造と年収の計算法について解説する。
クリニックの収益構造について
まずクリニックの収益構造について。
収益 - 費用 - 借金返済 = 年収
収益から人件費や材料費などの費用を引いたものがクリニックの利益。
さらに利益から借金の返済分を除いたものが開業医の年収となる。
- 収益の計算法
- 費用の計算法
- 借金の計算法
についてそれぞれ見ていく。
①クリニックの年商の計算法
クリニックの医業収益(年商)は患者1人あたりの単価に患者数をかけることで計算できる。
クリニックの収益(年商)
単価 × 1日患者数 × 20日 × 12ヶ月
下記のデータによると、皮膚科の平均診療単価は3800円。
患者1人あたりの平均診療単価
内科 | 6900円 |
産婦人科 | 7000円 |
小児科 | 4800円 |
整形外科 | 4200円 |
皮膚科 | 3800円 |
(診療所経営の教科書より)
そこからクリニックの収益を計算すると
クリニックの収益
1日患者数 × 91.2万円
となる。
皮膚科は単価が断然低く内科の半分くらいしかない。その分多くの患者を集められなければ採算が合わないということが分かる。
②クリニックの利益の計算法
皮膚科の利益率は35%(第20回医療経営実態調査)とされているので収益の35%が利益である。
クリニックの利益
収益(1日患者数 × 91.2万)×0.35
診療科全体の平均利益率は30%程度なので、皮膚科は若干利益率が高い。
皮膚科は比較的経費のかからない科と言える。
しかし美容をやる場合は美容部員などの人件費もかかるので利益率は下がるだろう。
ちなみに飲食店の利益率は10~15%らしい。
③開業医の年収の計算法
さらに利益から借金の返済分を除いたものが開業医の年収となる。
年収 = 利益 - 借入金の返済
借入金の返済額を年500万(1億を20年で返済⇒利子は費用に含む)
と考えて開業医の年収がいくらになるか計算してみると下記のようになる。
皮膚科開業医の年収
1日患者数 × 91.2万 × 0.35(利益率)- 500万
開業医の年収額は実際いくらになるか?
計算式から患者数と年収の関係をグラフにしてみると、開業医の年収は1000万から3000万円まで幅がある。
勤務医並みの年収を確保するには最低60人以上の患者数を維持する必要がある。
できれば80人前後くらいは欲しいところ。それで年収2000万。
クリニックの患者数別年収額
1日患者数が50人程度だと、なんと年収1000万くらいまで下がってしまう。これでは勤務医より低い年収になる。
開業して収入が下がったら元も子もない。
皮膚科の患者数は平均56人らしいので、最低でも平均値はクリアしなければならないということになる。
診療科別の1日平均患者数
内科 | 36人 |
産婦人科 | 42人 |
小児科 | 46人 |
整形外科 | 108人 |
皮膚科 | 56人 |
(診療所経営の教科書より)
100人以上の患者が来れば年商1億、年収3000万だが、多分そこが限界だろう。
これから新規で1日100人以上患者が来るクリニックを作るのは難しいと思う。
皮膚科と内科の年収比較
皮膚科と内科の開業医の年収を患者数で比較してみる。
表の通り、単価の高い内科は35人で勤務医の年収をクリアできる。平均患者数40人が目標だそうだ。
皮膚科の63人と比べるとだいぶ少なくてよい。
でも内科クリニックは多いので、患者数の確保は皮膚科より難しいようだ。
結局クリニック開業は儲かるのか?
開業医の年収ランキングを見ると皮膚科は上位にあるが、実際は開業で大儲けっていうのは難しそう。
一般皮膚科でやっていくとすると、具体的な目標は1日患者数80人で年収2000万といったところだろう。
勤務医より少し高いくらいである。
そのためには80人は患者の見込める土地で、診られるキャパのあるクリニックを作らないといけない。
まとめ
今回は戸建て開業で試算を行ったので、テナント開業で初期費用を抑えれば借金返済分が減って、もう少しキャッシュフローがよくなると思う。
他に収益を上げるための方法は患者数を増やすか、単価を上げるかである。
しかし患者数を増やすのには限度がある。
単価を上げるためには自由診療に手を出さざるを得ないのかもしれない。
ただしクリニックの収益を考える前にやっておくべき大切なことがある。
つづく
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