最近はガイドラインがたくさんリリースされている。
治療の参考にできる情報が増えるのはよいことだが、多すぎてとてもカバーしきれない。
しかしガイドラインは専門医試験でも出題されるので、把握しておく必要がある。
そこで皮膚科に関連したガイドライン(皮膚科学会のガイドラインと学会以外のガイドライン)をまとめ、3回に分けて簡単にレビューしてみる。
- 皮膚科学会のガイドライン→(皮)
- 皮膚科学会以外のガイドライン→(他)
- 1.湿疹・皮膚炎・蕁麻疹
- 2.感染症
- 3.創傷・皮膚潰瘍
- 4.付属器疾患・色素異常
- 5.水疱症・薬疹
- 6.乾癬・掌蹠膿疱症
- 7.腫瘍
- 8.膠原病
- 9.その他
付属器疾患・色素異常
尋常性白斑診療ガイドライン(皮)
難治で困る尋常性白斑。
「とりあえずステロイド塗っとけ」という所からもう一歩進むためのガイドライン。
やはり難治であることに変わりはないが、プロトピック、紫外線、手術も含めた治療の全体像が分かりやすい。
尋常性ざ瘡・酒さ治療ガイドライン(皮)
ニキビと酒さを扱った欲張りなガイドライン。
ニキビは近年薬剤が一気に増えて治療法が変わってきた。
取りあげられている薬剤が多すぎるため、かなり複雑になってしまっているが一通りは目を通しておく必要がある。
酒さはこれまで推奨される治療が存在しなかった(すべてC2)が、メトロニダゾール軟膏が適用になったことは喜ばしい限りである。
(しかし毛細血管拡張型に対してはやはり治療法が存在しない)
円形脱毛症診療ガイドライン(皮)
手探り状態で治療していた円形脱毛症も、ガイドラインの登場で診療しやすくなった。
急性期 / 慢性期、軽症 / 重症の4パターンで明確に治療法が提示されていてわかりやすい。
ただ難治例がどうしようもないのは変わらない。
難治例に対してJAK阻害薬が保険適応になったため、ガイドラインも改訂されるはず。
男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン(皮)
要するにリアップかプロペシア(orザガーロ)を使え、というシンプルなガイドライン。
AGAクリニックで行われているメソセラピーについては否定的である。
原発性局所多汗症診療ガイドライン(皮)
シンプルでわかりやすいガイドライン。
多汗症は自費診療が中心になるのでガイドラインがあるとありがたい。
基本は塩化アルミニウムで、そこから治療が派生する。
最近抗コリン外用薬が保険適用になったので、ガイドラインも改訂されるはず。
抗コリン外用薬が追加されたガイドラインはこちら。
(保険診療の守備範囲が大きく拡大した)
化膿性汗腺炎診療の手引き(皮)
意外と出会う化膿性汗腺炎のガイドライン。
最近ヒュミラが保険適応になり、治療戦略が変わりつつある。
また病態についても解明されてきており、知識をまとめるために読んでおきたい。
水疱症・薬疹
天疱瘡診療ガイドライン(皮)
天疱瘡は皮膚科の治療の中でも大きなウエイトを占める。
内服ステロイド、免疫抑制剤の使い方、副作用のチェックなど知っておくべき知識がたくさんある。
皮膚科医は天疱瘡の治療を熟知しておく必要があるため、必須のガイドライン。
類天疱瘡診療ガイドライン(皮)
天疱瘡よりも類天疱瘡の方が患者数が多い。そのため日常診療では類天疱瘡の方が重要と言える。
しかしこのガイドラインは天疱瘡ガイドラインの内容と被る部分も多い気がする。
天疱瘡のガイドラインを読んでおけば十分かも。
ただしDPP4阻害薬による薬剤性類天疱瘡の対応が書かれた補遺版は必読。
▼関連記事▼
重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症診療ガイドライン(皮)
重症薬疹のガイドライン。ガイドラインの中ではおそらく一番名前が長い。
薬疹はほとんどが軽症で薬剤の中止で治癒するが、危険な重症薬疹を見分けることが皮膚科医の重要な仕事である。
重症薬疹の管理は皮膚科医の基礎知識として必ず知っておく必要がある。
手薄になりやすい眼病変対応についても記載されている。
重症多形滲出性紅斑 スティーヴンス・ジョンソン症候群・中毒性表皮壊死症診療ガイドライン
薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン 2023(皮)
ようやく登場したDIHSのガイドライン。
意見がわかれるステロイドの使い方について明記されているのがポイント
乾癬・掌蹠膿疱症
意外にも尋常性乾癬の診療ガイドラインは存在しない。乾癬性関節炎、膿疱性乾癬のガイドラインと、生物学的製剤、紫外線療法のマニュアルが存在する。
また乾癬の類縁疾患である掌蹠膿疱症にもガイドラインがある。
乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(皮)
バイオ製剤のガイドライン。
使用前検査やフォローの仕方などが詳しく書かれている。
出てきた当初はおっかなびっくり使っていたが、だいぶ使い慣れてきた感はある。
ガイドラインに沿わないで使用して副作用が起こった場合は、かなり危ない立場になってしまうかもしれない。
専門医試験にも結構出題されているので読んでおく必要あり。
乾癬の光線療法ガイドライン(皮)
紫外線なしでは皮膚科診療は成り立たない。紫外線治療のガイドライン。
照射量や照射回数などはこのガイドラインに沿って治療を行う。
作用メカニズムにも触れられており、一度は読んでおきたい。やはりTregの誘導がカギか…。
乾癬だけではなくて他の疾患に紫外線治療をする場合にも役立つ。
乾癬性関節炎ガイドライン(皮)
乾癬性関節炎の全体像がわかるガイドライン。
まだ治療戦略が確立していないので、治療の項目はまとまりがない印象。
乾癬性関節炎は関節リウマチとオーバーラップする部分があり、リウマチを診られる人が扱うべき疾患だと個人的には思っている。
膿疱性乾癬診療ガイドライン(皮)
膿疱性乾癬は発熱を伴う全身疾患である。
尋常性乾癬とはまったくの別疾患と思っていた方がいい。
めったに出会わないが、遭遇したときのために全身管理の仕方について学んでおく必要がある。
掌蹠膿疱症診療の手引き(皮)
海外と日本で定義や疾患概念が異なっている掌蹠膿疱症。
そのあたりの話に加えて、サイトカイン、抗菌ペプチド、マイクロバイオームなど病態についても詳しく記載されている。
情報量が多く、読むと非常に勉強になるガイドライン。
掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き2022(他)
整形外科から出ている手引き。
ガイドラインではないので推奨度などは記載されていないが、内容はかなり充実している。
歯科への紹介状の書き方なども載っていて、買って損はない。
つづく
- 1.湿疹・皮膚炎・蕁麻疹
- 2.感染症
- 3.創傷・皮膚潰瘍
- 4.付属器疾患・色素異常
- 5.水疱症・薬疹
- 6.乾癬・掌蹠膿疱症
- 7.腫瘍
- 8.膠原病
- 9.その他
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