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こんな教科書がほしい――皮膚科以外のオススメ教科書

 

ある程度臨床経験を積んでくると、教科書やガイドラインに書かれていない疑問にぶつかることが多々ある。

そんな時に頼りになる医学書が欲しいが、なかなか見つからない。

 

自分は時々趣味(?)で皮膚科以外の医学書を読むこともあるが、他科ではそんな時に役立ちそうな本が結構ある気がする。

例えば診療に役立つ「エビデンス」がたくさん紹介されている本や、経験に基づく「考え方」が書いてある本である。

 

今回は皮膚科から離れて、面白かった他科の医学書を紹介する。

 

1.ステップビヨンドレジデント

エビデンスと言えばやっぱりこの本。研修医のときによく読んでいた。

救急の現場で犯しやすいミスを例に、最新の論文を交えて救急外来のセオリーを紹介していく形式。

読み物としての面白さに重点が置かれていて一見ポップなイメージを受けるが、内容は意外に高度なエビデンス集である。

チャプター毎に参考文献が大量に挙げられている。

エビデンスはいかに臨床応用できるかが大事ということがわかる。

エビデンスはある・なしではなく、どう解釈して臨床応用していくかが本当は大事なのに、そこをうまく切り込んだ情報源ってなかなかないよねぇ。

 

エビデンスはどうしても、ただの雑学的なものになりがちである。

このように、実戦で役立つ形でエビデンスを紹介してくれる教科書はなかなか無い。

 

2.寄り道呼吸器診療

教科書やガイドラインに書かれていない呼吸器内科の「診療の疑問」を解決するエビデンスを紹介するというスタイルの本。

この本は若い医師がふと立ち止まって悩むような、答えが出にくい諸問題について言及したものです。

「なぜこの患者さんは〇〇なんだろう?」という疑問から「エビデンスはあるのだろうか?」と寄り道することは、臨床と机上の学問をつなげるうえでの医師としての重要な視点ではないかと私は考えています。

 

またエビデンスからははっきりした結論を出せない場合は、筆者の見解が述べられている。

例えば関節リウマチ患者に間質性肺炎が生じた場合、関節リウマチによる膠原病肺かMTXによる薬剤性肺障害かを区別が難しいことが多いそうだ。

鑑別するための検査のエビデンスと限界が丁寧に解説されている。

臨床で疑問があるときは、エビデンスを一つ一つ確認することの重要性を感じさせられる。

 

3.極論で語る神経内科

この本はエビデンスではなく、経験に基づく専門医の考え方を解説したもの。

教科書というより読み物に近い。

この本は私の個人的な「神経内科に関してこんなことを考えて診療している」という放言ですべてが構成されています。

マニュアルでもなければテキストでもありません。哲学書に近いものではないかと思っています。

 

パーキンソン病は社会歴に応じて治療強度を決めるとか、ギランバレーは予後の予測ができないので頻回の病状説明が重要とか、経験に基づく各疾患の治療のコツが述べられている。

また神経内科で必ず問題になるはずの心因性疾患(身体表現性障害)への対応も詳しく書かれている。

 

「机上の知識」と「実際の臨床」の間には溝があって、それを埋めるためには経験が必要になる。

そんな体系化しにくい経験を文章にした本は、面白くて貴重である。

 

4.ロジックで進めるリウマチ・膠原病診療

この本も臨床の「考え方」に注目した教科書。

個々の疾患については優れた教科書・モノグラフが数多あるが,治療薬を「何をもとに決定し,どのように使用するか」など,根柢にある考え方を説いたものが意外と見当たらず,自分の思考経路(ロジック)を開陳するつもりで書いた.

 

本の構成は一般的な教科書と大差ないように見える。

しかし白眉なのは欄外の注釈である。

文法書は無味乾燥となりがちであるため,通読可能となるように,多くの注釈を付した。多くの注釈をつけて,“how to practice”が伝わるように工夫した点が,あえて言えば「本書の新しさ」である.

 

筆者の考えや色々なエビデンスが注釈に書かれていて、教科書と読み物のいいとこ取りになっている。

注釈をうまく使うことで硬めの教科書と読み物を両立させる工夫は目から鱗だった。

 

5.循環器治療薬ファイル

循環器の薬はたくさんあって難しい。

そんな薬の使い分けの方法を知りたくて読んだ本。

 

薬剤ごとの具体的な使用量のほかに実際使ってみた筆者の感想も書かれているので、ただのマニュアルではなく読み物としての価値もある。

なぜその薬を使うのかが納得できるようにしました。どこまで根拠があるのか、あるいは経験的なのであるのかがわかるように努めました。

それぞれの薬剤の雰囲気がわかることを念頭に置いてあります。

 

教科書やガイドラインではわからない、薬の「使用感」みたいなものが伝わってくる。

「教科書にはこう書かれているが実際はこう」とか「筆者はこうしている」ということが書かれており面白かった。

薬の使い方について、こうやって一歩踏み込んで書かれた教科書は、皮膚科ではなかなか無い。

 

6.はじめての精神科

個人的にファンの春日武彦先生の教科書。

精神科ほどマニュアルが通用しない科はないのではないか。

そんな中、春日先生の実体験に基づいた様々な問題への対応法や心構えが記載されている。

本書は紋切り型のマニュアルではない。だから理屈ばかりで実用の役に立たないというわけではないつもりである。

 

読み物としても面白く、精神科以外の診療にも役に立つ。

研修医の時に読んで自分の臨床の基礎を作ったと言っても過言ではない。

詳細はこちらで紹介しています>>精神科医・春日武彦先生から学ぶ臨床の極意

 

まとめ

 

皮膚科の「考え方」が書かれた本としては、「皮膚のトラブル解決法」が自分の理想に近いものである。

皮膚のトラブル解決法【皮膚科医のオススメ教科書②】
一般的な皮膚科の教科書は原発疹、続発疹の解説からはじまって、疾患の疫学、病因、病態生理などが詳細に書かれている。 ところが皮膚疾患は種類が多いので、どうしても1つの疾患についての記載は短くなりがちでイマイチ実践的ではない。 ...

 

一方「エビデンス」を集めた教科書がないか探して見つけたのは「EBM皮膚疾患の治療」。

 

しかし「透析のかゆみにレミッチは有用か」や「強皮症の皮膚潰瘍にトラクリアは有用か」など既存の治療の有用性を示したエビデンスがほとんどで、いまいち面白くない。

製薬会社の薬の説明会のような内容である。

実戦で役立つ、あるいは普段のちょっとした疑問に答えてくれるエビデンスをまとめた本やサイトがないかと探している。

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