ずっと外来診療を続けているとマンネリ化してしまうこともある。
そのまま漫然と過ごしていれば成長が止まってしまうような気がして焦ってしまう。
最近、一流料理人の本を読んでいると「日々の作業がルーチンワークにならないようする」ことの大事さが書かれていた。
料理人の作業そのものはルーティンがほとんどですが、「これはこんなもんだ」と思ってしまえば成長は止まります。
毎日ささやかなことでも「ちゃんと考える」ということが大事だと思います。常に課題を持ち、その答えを探し続ける。そういう日々の積み重ねでしか僕たちは成長できません。
ルーチンワークになってしまわないように、仕事を「経験」として蓄積していく必要がある。
そのためのコツを考えてみると
- わからなかった症例を流さず記憶に留めておくこと
- 経過を予測すること
あたりになるのではないか。
今回は「経験を積む」ことについて2冊の教科書から考えてみた。
わからなかった症例を記憶しておく
日々の診療でわからなかったり、うまくいかなかったりすることがある。
しかしその解決の糸口が急につかめるときがある。
それは似たような症例が偶然重なった時である。
精神科医春日武彦先生(>>精神科医・春日武彦先生から学ぶ臨床の極意)の教科書にそんな記載があった。
全然別の話だと思っていた症例Aと症例Bが似ていることに気づく。
今まで未解決の症例がごちゃごちゃと山積みされていただけだったが、その中にパターンが潜んでいることを知る。
そして一つの問題が解決すると、同時に全部解決する可能性が見えてくる。
いくつもの未解決ケースを抱えることは、うんざりした気分につながるかもしれない。しかしケースをある程度の数だけこなすと、急に見えてくるものがある。
全然別の話であると思っていたケースAとケースBとが構図が相似しているらしいことに気づく。
今までは未解決のケースがごちゃごちゃと山積みされていただけなので、その中にパターンが潜んでいることを知る。
実際にこういうことはよく経験する。
まったく診断がつかずステロイド軟膏でお茶を濁した症例が、他の症例から解決のヒントをもらえる。
そんなときに自分の診断力が上昇したという実感を持てる。
これが経験を積むということ。
わからなかった症例も流さずに、心に留めておくことが大事である。
ひとつが首尾よく解決したとすれば、同時に全部解決する可能性が見えてくる。
これが経験を積むということである。
漫然と仕事をしているだけでは身につかない。
漫然と仕事をしているだけでは身につかない。
経過を予測すること
次に岩田健太郎先生の著書より。
日々の診療できちんとアセスメントを行うことの重要性について。
治療開始前にその後の経過についての予測を立てておくことは大事である。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
うまくいった症例は「まぐれ」のことが多いのだという。
逆に予測通りにいかなかったときにこそ、成長のチャンスがある。
自分の予測と実際の経過とのズレを少しずつ修正していくことで、診療能力が向上していく。
アセスメントから予測される経過を辿らなかった場合は、必ず理由がある。少なくとも何らかの改善点はあるのです。
毎回毎回、感染症の予後予測をやり、自分の予測と実際の患者のズレに自覚的でいれば、感染症診断能力は格段に高まっていきます。
しかし予測を立てずに行き当たりばったりで診療していれば、得られるものはない。
治療開始前に患者の経過について予測を立てていなければ、自分の治療がうまくいったのか、うまくいかなかったのかわかりません。
例えば湿疹の治療。
「ステロイドを1週間外用すれば症状が治るはず」と予測を立てる。
しかしあまり改善していない。
そのように予測された経過と違っていたときに「なぜなのか」を考える。
それが経験として蓄積されていくはずだ。
まとめ
日々を漫然と過ごさない。
ある程度年齢を重ねると、これによって大きな差がついてくるのではないか。
イマイチな中堅の先生方をみると、強く感じることである。
差がついてしまった後では取返しがつかない。
使えないオヤジにならないために、これらを意識して診療を行っている。
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