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皮膚科で遠隔診療は可能なのかを考えた

 

最近話題の遠隔診療。

現行の遠隔診療の法律は、3か月に1回以上対面診療が必要ということで、使い勝手はかなり悪い。

初診算定は不可、初診から6カ月は算定不可、連月算定2カ月限度、再診患者の1割以下と「制約」がつけられた。

オンライン診療での医療変貌の権謀術数を警戒する

 

開業医の利権を守るための医師会のロビー活動のお陰だと思うが、今後は少しずつ規制が外れてくる可能性が高い。

 

また患者の診療の前に、遠隔診断は医師同士のコンサルテーションに用いられる可能性もある。

その走りとしてヒポクラというアプリが存在する。

皮膚疾患などの診療上の疑問を、オンラインで専門医に相談できるサービスである。

皮膚の写真と患者情報、あらかじめ決まっている項目を入力して送信すると皮膚科専門医から診断のアドバイスを得られるという。

 

一方「遠隔診療で皮膚疾患の診断が可能なのか?」という疑問がある。

実際に見ないとわからないという声が多い。

 

そこで実際にヒポクラを覗いてみた。

今回は皮膚科と遠隔診療について。

 

皮膚科の遠隔診療アプリ「ヒポクラ」

 

とりあえずヒポクラに登録だけすると、質問内容を見ることができる。

結果は

全然わからねえ……。

(自分の能力不足なのかもしれないが)

 

まず臨床情報が「以前からの皮疹が増悪しています」くらいしかない。

痒みがあるか、出没しているのか、他の場所にもあるのか…など追加情報が欲しい。

浸潤があるかどうか、触診も必要だろう。

 

さらに写真の条件である。

皮膚科の症例写真には、教科書や論文に掲載される「型」のようなものが存在する。

型に沿った写真であれば診断できる可能性は上がるのだと思う。

しかし皮膚科医ではない医者が写真を撮った場合、型に沿っていないため診断が困難になるのだろう。

 

またはっきりと言語化できない感覚的な部分もある。

現場では「なんだかよくわからないけど普通じゃなさそうだ。とりあえずステロイドを塗って様子をみてみよう」なんて判断せざるを得ないケースもあるが、そんな回答をするわけにもいかない。

 

やっぱり直接診ないとわからないという、面白みのない結論にたどり着いた。

 

もっと修行が必要だな。

ちゃんと解答されている先生もいて、尊敬するばかりである。

 

放射線画像や病理とは異なり、皮膚科の遠隔診療では写真の撮影条件という大きな壁があるようだ。

これは画素数とか解像度とかそういう方向の技術では解決できないのかもしれない。

動画であったりVRであったり、もっと診断画像の技術革新(5Gなら可能なのか?)が必要になるだろう。

 

デジタルネイチャー×皮膚科学

 

しかし「写真でも診断率は変わらなかった」という、いくつかの報告もある。

小児皮膚科において、写真に基づく診断と診察に基づく診断の一致率は83%(95%信頼区間[CI]:71~94%、κ=0.81)であった。

O’Connor DM, et al. JAMA Dermatol. 2017 Nov 15.

 

こういうデータを背景にして遠隔診療は普及してくる可能性がある。

そうなったときに「直接診ないと分からない」と言っていても、取り残されるだけかもしれない。

 

落合陽一氏の本を読んでいると面白い記載があった。

【関連】落合陽一から皮膚科医が学んだこと

 

最近のGoogle翻訳は精度が高くなってきている。

昔はあまり役に立たなかったが、今は論文も結構良い精度で読むことができる。

落合陽一氏は、今後は外国語を勉強するよりも、Googleが翻訳しやすい日本語を勉強するほうが大切になると述べている。

ロジカルにきちんと話せる人であれば、正確に自動翻訳してもらえるので、何語でも自由にコミュニケーションができる時代に向かっています。

自動翻訳は誤訳もありますが、それは話し手に問題がある場合が大半です。つまり話し手が機械に翻訳されやすい話し方をマスターできていないのです。

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

 

たとえば「今日一緒にご飯に行きませんか?」を翻訳する場合。

「ご飯」が「rice」と訳されるから誤訳になってしまう。

しかし「今日一緒に食事に行きませんか?」と直せば、うまくいく。

 

機械がダメなのではなく、人間が対応できていないということ。

機械翻訳をバカにする人がいますが、それは機械翻訳がバカなのではなく、話している本人が対応できていないのです。

日本再興戦略 (NewsPicks Book)

 

機械を人間に合わせる時代から、人間が機械に合わせる時代に変わってきつつあるということだ。

医療の分野でも同じことが言えるだろう。

 

「画像が悪くてわからない」ではなく、「スマホの写真でも診断できる能力」みたいなものを新たに身につける必要が出てくるのではないか。

 

「条件の悪い皮膚写真アトラス」みたいなものがあればいいのかな。

 

▼落合陽一先生のまとめはこちら▼

落合陽一から皮膚科医が学んだこと
落合陽一氏のことを初めて知ったのは「情熱大陸」だった。 落合陽一 筑波大学准教授。 いま最も注目されている研究者で、コンピューターを使い新たな表現方法を生み出すメディアアーティストとして知られる。 ...

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