芸能人の不倫が世間をにぎわす今日この頃。
東野圭吾の小説は「白夜行」や「容疑者Xの献身」など愛をテーマにしたものが多いが、この小説は不倫を題材にしたミステリー。
あらすじ
不倫を忌み嫌っていたはずの中年サラリーマン渡部が、ふとしたことから派遣社員と恋に落ちる。
ところが、あるとき彼女が殺人事件の容疑者とされていることが判明する。
彼女は真犯人なのか?渡部の心は揺れ動く。
以下ネタバレあり。
不倫にハマる男の心理とは?
東野圭吾に本格ミステリーを期待する読者からの評判はあまり良くないようで、このさえない主人公に感情移入できるかで評価が分かれるだろう。
本格ミステリーではなく、ミステリーの要素もある不倫小説として読むと面白い。
心理描写が浅いとの評価もあるが、派遣社員の女性にのめりこんでいく主人公渡部の姿はリアリティがある。
妻や子供がいても関係ない。相手が誰であろうと一度嵌ったら抜け出せない。
この時はまだ、今夜かぎりの気分だと自分にいい聞かせていた。
しかし、秋葉を目にした瞬間に、それは不可能だと思い知った。僕の気持ちは高鳴り、体温は上昇し、めくるめく思いは忽ち復活した。
いつの間にか彼女への思いは、僕自身が制御しきれないぐらいに大きくなっていた。
客観的にみると、妻も子供もいるのに、つまらないアリバイつくりのために右往左往する渡部の姿は情けない。
でもそれが恋愛の怖さである。
そんなに苦しくて大変なら、不倫なんてやめりゃいいじゃん。そう、全くその通り。
だけど秋葉と過ごした時間を振り返る時、僕は至福の境地に陥ってしまう。
痛い目にあったことのある人は、身につまされることがあるだろう。
しかし、のめりこんだ相手が殺人事件の容疑者であったらどうだろう。
渡部は怖気づくが、今更後には引けない。
このミステリー要素が小説の良いアクセントになっていると思う。
結局秋葉が既婚者である渡部に近づいたのは、不倫していた父親への当てつけのためだった。
物語は後味の悪いラストを迎える。
既婚男性の不倫がバレたらどうなるの?
不倫がバレた既婚男性の末路について、このような台詞が出てくる。
一生、謝罪の日が続くんだ。女房には頭が上がらず、家でも肩身の狭い思いをすることになる。死ぬまでそれが続く。
本編の最後に収録されているおまけのエピソード「新谷君の話」はなかなか含蓄がある。
不倫相手と結婚するために妻へ離婚話を切り出すが、別れられず妻が自殺未遂。
そして赤い糸で結ばれた理想の相手と思っていた不倫相手はメンヘラだった。
どうでもいいような女にのめりこんだらいけないということだな。
結婚した以上は恋愛なんてしないほうがいい。そんなものにはまったら、結局は自分自身をボロボロにしてしまうだけだ。
不倫する男の気持ちを知りたい人におすすめの小説である。
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