アトピー性皮膚炎や乾燥性の湿疹ではステロイド軟膏と保湿剤の併用が望ましいとされている。
その時に「保湿剤とステロイドはどちらを先に塗るのか」ということが問題になるが、現在3つの考え方がある。
保湿剤とステロイドの塗る順番
- 保湿剤→ステロイド
- ステロイド→保湿剤
- どちらでもよい
1.保湿剤→ステロイド
保湿剤→ステロイド派。
後で保湿剤を塗ったら、最初に塗ったステロイドが周りに広がってしまうのでよくないという考え。
皮膚科学会のホームページに書いてあるので一般的な意見だと思う。
日本皮膚科学会ホームページ
ステロイド外用剤と保湿剤の併用では塗る面積の広い保湿剤から先に塗り、後からステロイド外用剤を湿疹等の病気の部分だけに塗ります。
先にステロイド外用剤を病気の部分だけに塗ってから、保湿剤を塗るとステロイド外用剤が塗る必要のない部分まで広がることで、副作用が起きる可能性があります。
2.ステロイド→保湿剤
ステロイド→保湿剤派。
先に保湿剤を塗ったら、後で塗るステロイドがあまり吸収されないのでよくないという考え。
これを強く訴える人たちもいる。
アメリカの皮膚科学会のホームページにはそう書いてあるらしい。
米国皮膚科学会のホームページでは、保湿剤を使用してもよいが治療薬を直接皮膚に使用してからであると記載しています。
(日本皮膚科学会雑誌 , 124(3): 339, 2014 )
3.どちらでもよい
一方データでは、どちらを先に塗っても薬の吸収性は変わらないそうだ。
ステロイド軟膏と保湿剤の併用におけるステロイド皮膚移行性を検討した結果では、ステロイドを先に塗った方がステロイドの移行性は優れていた。
しかしその差はわずかであり臨床的効果に差を認めることはないと考えられた。
(西日本皮膚科, 73: 248-252, 2011.)
地方の皮膚科医の見解
どちらでもよいという論文もあるので塗りやすい方で良いと思う。
自分は保湿剤→ステロイドで塗るように指導している。保湿剤が先のほうが塗りやすいかなと。
経皮吸収が落ちるというのも微量だからほとんど影響しないだろう。
しかしステロイド→保湿剤派は、どちらでもよいという論文に対しても激しく反論しているようだ。
保湿剤で皮膚を覆ってから当該外用薬を使用しても、経皮吸収が落ち治療効果が落ちるというのが世界の常識です。
(日本皮膚科学会雑誌 , 124(3): 339, 2014 )
自分も「世界の常識から外れている」と怒られるかもしれないが、そこまで熱くなるほどのことでもない気がする。
自分のこだわりが無意味なものじゃないか、常に意識しておかないといけない。
つづく
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