前回の記事のつづき。
(まず最初に基礎編の記事を読んでください>>初心者のための皮疹の見かた「基礎編」)
今回は表皮に変化がある病変について解説する。
初心者向けに簡略化したものなので、上級者が読むと違った意見があるかと思いますがご容赦ください。
紅斑の表面がザラザラしている。
これは皮膚の外側(表皮)に病変があるということである。
この症状をみたときは湿疹を考える。
皮疹の原因が「体の外」から来た場合は、皮膚の外側(表皮)から変化が起こる(かぶれなど)。
しかし湿疹の診断のためには鑑別すべき疾患がある。
- 感染症
- 腫瘍
- その他の炎症性皮膚疾患
それぞれの疾患と「表皮の変化を伴う紅斑」の診療アルゴリズムについて解説してみたい。
鑑別すべき疾患①感染症
湿疹を診断するときの一番の注意点は、感染症(特に真菌症)を鑑別すること。
真菌などの病原体も「体の外」からやってくるため、湿疹と同じく表皮の病変を作る。
真菌症は周囲に環状の鱗屑が付くという特徴はあるが、基本的に肉眼的には湿疹と区別できない。
(「毎日診ている皮膚真菌症-ちゃんと診断・治療できていますか?」より)
真菌症の診断に必要なのは顕微鏡検査。
つまり真菌検査ができないと、湿疹を診断することはできないというわけだ。
▼真菌検査の詳しい方法についてはこちらの教科書がオススメ▼
感染症が否定できればステロイド外用を行ってよい。
鑑別すべき疾患②悪性腫瘍
もう一つ注意すべきなのは悪性腫瘍。
頻度は低いが、湿疹と見分けがつきにくい悪性腫瘍が存在する。
■ボーエン病
■菌状息肉症
(皮疹の因数分解・ロジック診断より)
これらを見分けることは皮膚科医でも難しい。
確定診断のためには皮膚生検が必要である。
しかし常に生検を行うわけにはいかないため、さしあたっては「ステロイドを塗って治らなければ、湿疹以外の疾患(悪性腫瘍など)を考える」という対応を行う。
治療期間の目安は1~2週間としている。
皮膚科はステロイドを出すだけの簡単な仕事と思われることもあるが、これらを見逃してしまうようでは皮膚科の診療をしてはいけない。
ただし湿疹が治らないのは「皮疹が湿疹ではない」場合だけではないので注意が必要である。
やはり真菌感染症だったということや、きちんと外用していなかったということもある。
(湿疹が治らない理由についてはこちらの記事で>>ドクターショッピングを避ける工夫③湿疹編)
外用できているか確認し、場合によっては再度真菌検査も行う。
鑑別すべき疾患③その他の炎症性疾患
他に表皮の変化がある病変として、乾癬や扁平苔癬がある。
■乾癬(皮膚科Q&A)
■扁平苔癬(MSDマニュアル)
これらはステロイド外用が効くので、湿疹と見分けられなくても治療上の問題はない。
しかし本格的な皮膚科診療を行うならば、見分けられるようになる必要がある。
まとめ
理屈を学んだら、次に自分の中に疾患の正常像をつくらなければならない。
湿疹を診られるということは、すなわち湿疹以外の疾患を見きわめられること。
そのためには湿疹をたくさん診る「量のフェーズ」が必要不可欠である。
▼診断力を強化するための方法は別記事で解説▼
「表皮に変化がない病変」については、初心者のための皮疹の見方(応用編②)へつづく
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