学生や研修医の時、内科や外科とかで、まったく聞いたことのない病気はあまりなかったように思う。
しかし10年近く皮膚科医をやっていても、いまだに聞いたことのない皮膚病がたくさんある。
皮膚疾患の種類はとても多い。
皮膚科の百科事典「皮膚科学大系」は全19巻だが、これでもカバーできていない疾患がたくさんある。
報告によると、皮膚の病気は2000~3000種類以上あるそうだ。 (日本医事新報4175, 40. 2014)
しかし皮膚科患者の8~9割は湿疹や水虫などの一般的な疾患であり、だいたい20種類くらいの病気をカバーできていればなんとかなるのだという。
皮膚受診患者の疾患割合は?
皮膚科受診患者の疾患の割合を調べた報告がある。
湿疹、白癬、蕁麻疹などありふれた疾患が多く、上位の10疾患だけで65%を占めていて難しい病気は入っていない。
皮膚科受診患者の疾患トップ 10
1・湿疹 18.7%
2・アトピー性皮膚炎 10.0%
3・足白癬 6.5%
4・蕁麻疹 5.0%
5・爪白癬 4.8%
6・ウイルス性ゆうぜい 4.5%
7・乾癬 4.4%
8・接触皮膚炎 4.0%
9・ざ瘡 3.6%
10・脂漏性皮膚炎 3.3%
さらに上位20疾患までで85%をカバーできるという。
特に「水虫」と「湿疹」(アトピーや脂漏性皮膚炎なども含む)の患者は多く、2つだけで約50%を占めている。
湿疹群 | 38.9% |
湿疹 | 18.7% |
アトピー性皮膚炎 | 10.0% |
接触皮膚炎 | 3.9% |
脂漏性皮膚炎 | 3.3% |
手湿疹 | 3.0% |
水虫 | 11.3% |
足白癬 | 6.5% |
爪白癬 | 4.8% |
これらは多分半年も皮膚科を勉強したらよいのではないだろうか。
そこまでで止まってしまっている人も意外に多くて、実際にその程度でもあまり困らないのかもしれない。
2~3年で医局を辞めても、皮膚科医を名乗りバイトで稼いでいる人もいる。
難しい病気は大きな病院に紹介してしまえばいい。
しかし一生に一回出会うか出会わないかの1~2割の病気が皮膚科の難しさであり、面白さでもあると思う。
レアな病気をどうするか?
フォローしている高須賀先生のブログにも同じような話があった。
>>「若手に劣るベテラン」問題と、「トッププロ」の凄まじさについて
病院の業務の8割はルーチンワークである。
そしてルーチンワークを習得した段階で勉強をやめてしまう人が多いのだという。
日常業務の大抵の事はルーチンワークだ。病院で行われる業務の8割ぐらいの事は、2~3年程度もあれば習得し終わってしまう。
こうして素人からプロとなった多くの人は、勉強する事を辞めてしまう。
しかし逆に言えば残り2割は、ルーチンでは対応できないレアな事例で占められている。
知らなくても問題がない2割についての勉強をやめたとき、医者のキャリアは腐ってしまう。
一度遭遇しても、その後二度と遭遇しないような事例についてまでキチンと勉強を行い続ける事は、コストパフォーマンスから言えば最悪以外の何物でもない。
しかしここで「勉強をしない」という選択肢を選んでしまった時、医者としてのキャリアは腐るのだろう。
皮膚科医の実力は、ほとんど遭遇することがない1~2割の病気をどれだけカバーできるかにかかっている。
コモンディジーズだけをカバーして浅くやっている人は、皮膚科の美味しいところは味わっていんじゃないかと思っている。
まあコモンにはコモンの難しさがあるんだけれど。>>【関連】診断力を強化するためにどうしたらよいか?
つづく
▼皮膚科の面白さについて考える▼
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