以前皮膚科で研修した研修医が、4月から他科の常勤医師として赴任してきた。
こういうことがあるから研修医は侮れない。
今回はマイナー科指導医の研修医教育について書いてみる。
研修医の教育法
研修医の教育法についてはコーチングやら色々言われているが、そういうところは本質ではない気がする。
マイナー科の研修はせいぜい1か月程度で、コーチングの手法を取り入れて研修医を一人前に育て上げる必要はあまりない。
しかし研修医を甘く見てはいけない。
研修医は色々な部署を移動するので、院内でも屈指の情報網を持っている重要人物である。
そのため研修医の評判を上げれば、口コミで院内での皮膚科の評判も上がる可能性がある。
皮膚科は売上の低い零細診療科のため院内でのアピールが大切。
関連記事>>売上が低くて肩身の狭い皮膚科の経営戦略とは
そこで研修医を逆に利用することができれば、しめたものである。
研修医指導の注意点
逆もまた然り。
院内屈指の情報網が逆に作用する可能性もある。
研修医に評判が悪ければ、院内全体での評判も下がってしまう。
また今回のように将来の同僚になるかもしれないので、とにかく悪印象を与えないことも大事だろう。
自分が研修医の時も、研修医に厳しい(態度の悪い)指導医というのがいて、今でも覚えている。
もし今同じ職場にいたら、優しくは接さないと思う。
ということで、「楽で勉強になる皮膚科」をコンセプトにしている。
外来では患者ごとに皮疹の診かたとか注意点とか色々説明するようにしているし、生検や手術の執刀なんかも積極的にやってもらっている。
特に「手技をやらせてもらえた」というのは、自分の経験上好印象につながりやすい。
だけど過剰な指導はせず、土日は休み。
外来での指導は、患者1人に1分としても、30分は外来が余計にかかるから結構大変であるが、院内での皮膚科の地位向上のためにも大事なことだと思う。
その甲斐あってか皮膚科の研修はQOLが高いと評判である。
勉強になるとはあまり言われないのが悲しいところであるが。
研修医に権威を示す
さらにあわよくば皮膚科の存在感もアピールしたい。
岩田健太郎先生の著書に参考になりそうなことが書いてあった。
医者同士のコミュニケーションについて書かれた本だが、研修医の教育についても触れられている。
岩田先生は研修医に「権威を示す」ことが必要だと述べている。
指導者の教育パフォーマンスを上げるためには、生徒から評価されることが大事。
それは過大評価でもよくて、本当に権威があるかどうかはあまり関係ない。
具体的には
「このくらいは知っておいたほうがよいよ」
「このへんはマニアックだから別に知らなくても大丈夫」
ということをあえて伝える。
これは「世界の広さ」を示すことになるそうだ。
研修医にここまで知っておこう、ここからは知らなくていいよ、みたいな境界線を示す。
これを外の世界がすかして見えるように意図的にやるわけです。
そして、広大な世界をちら見してもらってから「君はここまでやっておけばよいのだよ」と鷹揚にのたまうのです。
見果てぬ地平を見てきたんだよ、という大人の余裕を感じさせて権威を示そうという試みである。
これによって教育のパフォーマンスが上昇する。
要はどれだけさりげなく知識をひけらかせるか。
これがわざとらしいと自慢げになってウザいだけ。
何事においても大切なことである。
(>>見返りを求めていない?「さりげない気遣い」が好かれる理由)
こういう手法で皮膚科医の権威を示せればうまくいくかもしれない。
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