皮膚科ではドクターショッピングをする患者が多い。
じんま疹も難治なので、転院してくる患者を多く経験する。
これを避けるためにはきちんと内服していない患者が一定数いることを意識しておく必要がある。
今回はじんま疹診療の注意点について。
▼前回の記事▼
じんま疹診療の注意点
「じんま疹が他の皮膚科で治らない」といって受診する患者は多い。
よく話を聞いてみると、しっかりと内服していない患者が意外といるようだ。
1.眠気で内服していない人がいる
なぜかと聞くと「眠くなるのであまり飲んでいません」と言われたりする。
そんなときは眠気の少ない抗ヒスタミン薬に変更して毎日内服してもらうだけで改善してしまう。
難治性の蕁麻疹と診断する前に、ちゃんと内服しているかの確認が必須である。
抗ヒスタミン薬の副作用として眠気がある。
最近の第二世代抗ヒスタミン薬では眠気は少ないとされているが、実感としてはデータよりもだいぶ多い印象がある。
眠気の発生率(添付文書より)
ルパフィン | 9.3% |
アレロック | 7.0% |
タリオン | 5.3% |
ザイザル | 5.2% |
アレグラ | 2.3% |
デザレックス | 1.0% |
ビラノア | 0.6% |
ちなみに自分はルパフィン、アレロック、タリオン、ザイザルは眠くなる。アレグラ、デザレックス、ビラノアは大丈夫。
まず眠気の少ない薬から処方するのが、ドクターショッピングを避けるために重要だと思う。
2. 予防的内服
もう一つは予防的内服。
話をよく聞くと「薬を飲むと引くけど、止めると出る」という状態を、治らないと患者が表現していることがある。
蕁麻疹は薬を飲んで症状が消失しても、しばらくは内服を続けたほうがいいとされている。
特発性の蕁麻疹では,薬物治療により症状が消失または軽快した後もしばらく抗ヒスタミン薬の内服を続ける方が良い.
内科のクリニックなどではあまり説明されていないこともあり、抗ヒスタミン薬を内服したり止めたりを繰り返している患者も一定数いるようだ。
症状が消えてもしばらくは薬を止めないように説明しておくことが大事である。
予防内服の期間
・急性蕁麻疹では数日から1週間程度
・発症後2カ月以内の慢性蕁麻疹では1カ月
・発症後2カ月以上経過した慢性蕁麻疹では2カ月
じんま疹の治療法
とはいえしっかりと内服していても難治な患者はいる。
特に1か月以上続く慢性の蕁麻疹の治癒率は低い。
治癒までの平均期間は72.3ヶ月(約6年)だそうだ。
(Hiragun M. Allergy 2013; 68: 229.)
さらに原因のはっきりしたアレルギー性蕁麻疹は5%しかなくて、ほとんどが原因不明である。
蕁麻疹のタイプ別割合
- 特発性:72.7%
- 物理性:7.3%
- アレルギー性:5.4%
(田中稔彦. アレルギー 2006; 55: 134.)
薬を微妙に変えてみたり増量したりするのが基本戦略なのだが、原因の検査や別の治療を求めてドクターショッピングを繰り返す人も多い。
まず特発性じんま疹は原因不明であることを説明しておかなければならない。
さらに「難治であること」、「時間がかかること」に納得してもらい、腰を据えて治療に取り組むことが大事になる。
まとめ
最近、難治性の蕁麻疹に対して、喘息で使われる抗IgE抗体(ゾレア)が保険適応になった。
治療がやりやすくなったが、内服できているか確認することの重要性が増したんじゃないかと思っている。
本当に難治の人は仕方ないが、治る人を難治と勘違いして高額治療を行うことは避ける必要がある。
つづく
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