前回(今の時代の医師に学位が必要なのか考えてみた)、学位は必要性はないがメリットはあると書いた。
バイオ系の博士号を持ったポスドクも在籍していて、彼らから学ぶものも多かったように思う。
今回、自分が研究から何を学んだか、具体的に思いつくことを挙げてみた。
- プレゼン力
- 英語で論文を読む力
- 問題解決能力
- 研究に対するコンプレックスがなくなる
今回はこれらについて解説する。
1. プレゼン力
毎週のようにプレゼンをするのでプレゼンの手法については考えさせられた。
参考になったのはプレゼンのうまいポスドク。
スライドは淡白と言えるくらいシンプルで、ストーリー構成がしっかりしているので分かりやすい。
情報量の多いスライドはあまりよくない。スライドには禅の心を取り入れることが大事ともいわれている。
一方、研究内容は立派だが、スライドも話もまとまりがなくて、分かりにくいプレゼンをする人もいて、これも参考になった。
昔は研究の話は難しくて分からないと思っていたが、理解できないのは難しいからではなくてプレゼンが下手だからということが分かった。
プレゼンがうまい人は研究内容が難しくても分かりやすい。
2. 英語で論文を読む力
「学生のとき原著でハリソンを読みました」なんていう人もいる。
しかし自分は三流大学出身なので、当然ハリソンの原著は読んだことはないし英語には抵抗がある。
研究をする前は日本語論文ばかり読んでいたが、研究する上では大量の論文を英語で読まないといけない。
英文をたくさん読んでいるうちに、それなりに抵抗は無く読めるようになった。
今は臨床で気になることがあった時、英語論文にアクセスできる。
Google翻訳も多用はしているが。
大学院で「情報収集力」という重要なスキルが強化されたという実感がある。
臨床の情報であれば日本語でも手に入るが、英語までカバーできると情報量がかなり増える。
3. 問題解決能力
臨床ではなんとなくうまくいくこともあって、それで許される。
しかし研究ではなんとなくうまくいっても再現性がなければ失敗に等しくて、常に理詰めで考えなければならない。
また実験を進める上で、「うまくいかなかった時はどうするのか」次の手まで考えておかなければすぐに手詰まりになってしまう。
そして分からないことがあれば論文を検索し解決法を模索する。
研究では、自分の疑問は指導教官も大体わかっていないため、人に聞いても解決しないことが多い。
そのため問題は自己解決することが求められる。
この方法を応用して診療で行き詰ってしまうということが少なくなったと思う。
4. 研究へのコンプレックスがなくなる
これはおまけだが、一番大切かもしれないこと。
研究を自分でやってみる前は、研究をしている人に対するコンプレックスがあった。
「あいつらよくわからんけど何か賢そうやな…」って。
実際に自分もやってみると、大したことはやってないなと分かるようになる。
学歴コンプレックスとかもそうだが、意外と重要なことである。
吉本隆明(よしもとばななの父)は著書で、大学に行くことについて語っている。
世の中には大学に行っていないことで、余計なコンプレックスを抱えてしまっている人がいるのだという。
三浦つとむっていう、素晴らしい哲学者がいるんです。ところがこの人は大学出てないってことが弱点になってたと思うんですよ。
立派な大学出たってヤツに対して、それだけの理由で嫌悪感を持っちゃうようなところがありましてね。
大学で得られるものはないが、のちのち憧れすぎないために大学に行ったほうがいいと。
大学に行くってことは失恋を経験するみたいなもんで、がっかりすることが重要なんです。こんなもんかって見当がつくようになりますからね。
研究に関しても同様である。
「どうせ俺は研究やってないから」とか「研究やってるヤツには負けない」とか、アカデミアに対するコンプレックスをもっている人は多い。
自分は研究者に対する余計なコンプレックスを持たないために、大学院に行ってよかったとも思っている。
まとめ
プレゼン力、英語で論文を読む力、問題解決能力の3つの力はとても大事だと思う。
学位は役に立ってないけど、3つの力が診療で役に立っている。
色々な場面でこれらの能力を取得することは可能だと思うが、効率よく身につけられるのが研究なんじゃないかと思っている。
ただ、そのまま研究のキャリアを進むかどうかは話が別である。
そのあたりのことは次回の記事で解説する。
つづく
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