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「また来たくなる外来」とヒューマニズムの話【医学書評】

 

色々な面白い医学書を書かれている國松淳和先生。

これまでにいくつかの本を紹介してきた。

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今回紹介するのは「また来たくなる外来」。

この本のテーマは医学書×自己啓発本。主に外来でのコミュニケーションスキルについて書かれている。

 

外来診療の目標は何か?

 

國松先生が目標にするのは「再診率の向上」である。

定期的に医師と会うことで患者は安心感を得る。

これによって不要な予約外受診を減らし、効率よく外来診療を行うことができるのだという。

つまり患者がドロップアウトせずに通院を続けることが重要なのだ。

 

コミュニケーションスキルを用いて患者の満足度を上げるのは、外来にまた来てもらうため。

このコンセプトが非常に優れていると思う。

 

コミュニケーションは気持ちの問題なのか?

 

一般的な教科書では、コミュニケーションは医学知識・技術との対比で語られることが多い。

医学の知識や技術は事務的なもの。コミュニケーションは人道的なもの。

 

  • 医学知識・技術=事務的
  • コミュニケーション=人道的

 

愛情や思いやりなど、ヒューマニズムの観点からコミュニケーションの重要性が述べられている。

患者様の話をよく聞いて、寄り添う「気持ち」が大切なんですよ、と。

 

しかしどれだけ思いやりがあったとしても、診療がうまくいくとは限らない。

「また来たくなる外来」では、コミュニケーションは、あくまで「診療上の良いアウトカムのためのツール」というスタンス。

気持ちの問題ではなくスキルだと書かれている。

私、実は外来診療が好きなわけではありません。

人が好きなわけでも、会話やコミュニケーションが好きなわけでもありません。

スキルさえ身につければ苦手でもできるようになるのです。

 

現場で必要なのは、愛情や思いやりではない。

積極的に話を聞くというのは、優しさでは決してありません。効率化、そして戦術です。

共感さえすれば、ではないのです。

 

このようにヒューマニズムの問題にしないところが実践的で、キレイごとばかり書かれた教科書とは一線を画している。

 

検査と治療の効用

 

この本の面白いところは、検査や治療もコミュニケーションのツールと考えている点。

 

最近、検査や治療ではEBMが重視されていて、診療はかなりシステマチックになっている。

検査前確率、検査後確率。メタアナリシス。

 

しかしEBMとは違った観点で、検査、治療の効用を考えることも重要である。

 

たとえば「検査はそれだけでも治療効果がある」とか。

検査は患者さんとの距離を適正化するための道具です。

人でないものに間に入ってもらう。検査はそれだけで治療効果がある。

 

「エビデンスがない治療であっても、介入しようとする姿勢自体が安堵を生む」とか。

対症療法を考えることは、外来診療を考えることなり。

あまり有効な手段がないのはわかっていても介入する姿勢が必要である。医師の介入が一定の安堵を生むこともまた確かである。

 

実際の現場ではこのようにEBMではない部分も重要である。

 

まとめ

 

医学部の教育を思い返してみると、やはり「気持ち」に重きが置かれていた気がする。

しかし現場で必要なのは「気持ち」ではなくアウトカムである。

ココロがキレイで患者思いの医師が、必ずしも良いアウトカムをもたらすとは限らない。

 

一般論のキレイゴトに終始して、本来の目的を見失ってはいけないだろう。

コミュニケーションは、あくまでも良いアウトカムのためのツールである。

「また来たくなる外来」は実践的なコミュニケーションの教科書として有用だと思う。

 

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