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医療現場のコミュニケーションを学べる本5選

 

医療現場で働いていると、コミュニケーションの問題に遭遇することは多い。

しかしコミュニケーションというと「患者様の気持ちに寄り添う」といったキレイゴトばかりがクローズアップされがちである。

だが現実はそれでやっていけるほど甘くない。

そこで今回は医療現場のリアルなコミュニケーションを扱った本を5冊紹介する。

 

医者と患者のコミュニケーション論

筆者は唐沢版のドラマ「白い巨塔」の監修をされた呼吸器内科医の里見清一先生。

この本で扱われるのは、主にがん患者とのコミュニケーションである。

 

道徳的な観点ではなく、あくまでも「プロとして必要なスキル」という観点で述べられている点が特徴。

コミュニケーションはスキルなのだから、真心があれば分かってくれる、なんて次元のものではない。必要なのは愛情や思いやりではなく、プロとしてのスキルである。

 

がん患者の苦痛を軽減するためには、良好な関係を築くことが必要不可欠。

マキャベリの「君主論」を用いて、良好な関係を築くためのスキルが解説されている。

そのための参考書として私が若い人に真っ先に推薦しているのがマキャベリの「君主論」である。

重要なのは根底にある「人間というもの」の洞察である。

 

あえて露悪的に書かれている部分もあるが、具体的な技法が学べる良書である。

患者と家族にウケがいいのは、休日に回診することである。私はわざとラフな恰好に上だけ白衣をひっかけて、病室に立ち寄る。できるだけ恩着せがましくなく、自然にやるほうがいい。

 

また来たくなる外来

著者は総合内科医の國松淳和先生。

この本で扱われるのは、主に外来患者とのコミュニケーションである。

 

外来診療では、定期的に通院することでしか改善していかない症状がある。

つまり再診率の向上がアウトカムの向上につながるわけである。

この本の目指すものは、外来診療のもたらす「結果」の向上です。

アウトカムの指標を「患者さんにまた来たいと思わせることができるか」の一点に持っていくことにします。

 

そのために必要なのは、ぬくもりや絆ではなく「スキル」。

ぬくもりや絆という言葉は、一見感触はよいですが、あまり中身がありません。

私は仕事でやっているだけです。人が好きなわけでも、会話やコミュニケーションが好きなわけでもありません。スキルさえ身につければ苦手でもできるようになるのです。

 

言葉遣いや身だしなみといった細かなポイントから、コミュニケーションの観点から見た検査や対症療法の効能など、幅広く解説されている。

 

特に「コミュニケーションの手段として検査や治療を活用する」という視点は他書にはなく、有用な本である。

検査を「検査後確率をどう変化させるか」という代物として扱うのではなく、一種の「効能」としてどうかという視点で考えます。検査は患者さんとの距離感を適正化し、ほっとしてもらう効果があるかもしれない。

有効な手段がないのはわかっていても介入する姿勢が必要である。

 

レジデント初期研修用資料 医療とコミュニケーションについて

著者は内科医のmedtoolz先生

この本で扱われるのは、主に救急外来でのトラブル回避のコミュニケーション。

コミュニケーションを、診療のクオリティを上げるための手段として捉えていた前の2書とはスタンスが大きく異なる。

 

想定されているのは、かなりシビアなシチュエーション。

救急外来は地雷原のような場所。誠実な対応では太刀打ちできないような患者が必ずいる。

地雷原のような救急外来という場所は、漠然と「誠実な応対」をしていたのでは絶対に失敗するような患者さんが必ずいる。

 

「麻薬系鎮痛薬の中毒になった人が夜間の外来を騒がせる」

「患者の家族に囲まれて「おまえ何オジキ置いて突っ立てるんだ?ボケが」と恫喝される」

このように診療のクオリティとか言ってられない状況は多々ある。

 

そこで弁護士の危機管理や警察の人質交渉テクニック、米軍の交戦規定などを元にして、患者との交渉術が解説されている。

シビアな状況で生き残るためのコミュニケーション術は、いざというときに必ず役に立つはず。

 

はじめての精神科

著者は精神科医の春日武彦先生

この本で扱われるのは、難しい状況でのコミュニケーション。

臨床現場では一筋縄では解決できない問題に遭遇することがある。

そんなときに、どんなスタンスで向き合えばいいのか。それを解説することで「読んで気が楽になる」ことを目指して書かれている。

精神科疾患について書かれているが、普遍的な内容なので精神科以外でも役に立つ。

 

たとえば

  • 援助を拒否をする患者
  • 治してあげればそれが本人にとってベストであるとは限らない
  • 何をやっても成果が上がらない

など、どれをとっても気が重くなるシチュエーションである。

 

当然解決策などないわけだが、バーンアウトを防ぐための気持ちの持ち様について解説されている。

ケースによっては一時しのぎでこれから先もやりくりしていくしかないものもある、というのが事実でしょう。つまり「解決なんてものはない」といった前提で問題と向き合うだけの柔軟性が必要だと思うのです。

 

またクレーマーとして遭遇しがちな「境界性パーソナリティ障害」について詳細に書かれている点も特徴である。

クレーマーについての本を読むと大概は「いかにして自分の気持ちを抑えてコントロールするか」ということが書かれているが、春日先生はクレーマーに遭遇した我々の苛立ちに寄り添ってくれる。

ムカついたからといって自己嫌悪を覚える必要はまったくないと思います。

腹が立つほうが自然な場合には、そう感じたほうが「普通の人間としての感覚」をキープできて仕事のうえではむしろ大切なことだと思います。

 

まさに「読んで気が楽になる」。様々な理不尽な状況に消耗させられがちな我々の、心の支えになりうる本である。

 

コンサルテーションスキル

著者は感染症内科の岩田健太郎先生。

この本で扱われるのは、医療従事者同士のコミュニケーションである。

(ダイヤモンドプリンセス号の一件を見るとご自身が実践できていないようだが、本の内容は参考になる)

 

以下の2つについて解説されている。

  • コンサルテーションを受けた際の他科とのコミュニケーション
  • 部下や研修医とのコミュニケーション

 

特に皮膚科は他科からのコンサルテーションを受けることが多い。

そのためコンサルタントとしてのプロフェッショナリズムを学んでおくことは重要だと思う。

 

専門家としてのスキルとコンサルタントとしてのスキルは異なる。

ときに自分の主張をゴリ押しして、他科とトラブルを起こしている専門家を見かけることがある。しかしコンサルタントの実力は相手のニーズを引き出して落とし所を探せることにある。

 

また部下とのコミュニケーションにもページが割かれている。

マネージャーの立場になると、どこまで部下に任せるかというのは重要な問題になる。

細かすぎる指導は好まれない。しかし丸投げにしてしまうと思わぬ見落としが生じる。

そのあたりのさじ加減についても書かれており役に立つ。

 

こういう観点の教科書は他にはなく貴重である。

 

まとめ

 

今回はキレイゴトではないスキルとしてのコミュニケーションを扱った本を紹介した。

コミュニケーションと言っても場面によって求められるスキルは異なる。

様々なシチュエーションでのスキルを学べば、少しは臨床がうまくいくかもしれない。

 

今回紹介した本

 

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