皮膚科の勉強をしようと思って教科書を探してみても、良い本を見つけるのは意外に難しい。
症例写真が重視されるので、文章は無機質な羅列になりがち。
写真はきれいだけど内容はショボいという本も多く、読み物として面白い教科書は少ない。
そこで今回は皮膚科診療に役立つと思われる教科書・参考書を分野別に15冊、難易度をつけて紹介する。
皮膚科医だけでなく医学生や研修医、さらに看護師、薬剤師などのコメディカルの方にも参考にしてもらえれば。
難易度
★医学生、他科志望の研修医におすすめの本
★★皮膚科志望の研修医、皮膚科医におすすめの本
★★★皮膚科専門医におすすめの本
※※この記事はかなり多くの本(15冊)を紹介していますので、研修医など初学者の方はまずは厳選5冊の簡易版から読んでみてください。
治療薬①:外用薬
外用薬は皮膚科治療の主体。種類と使い方をマスターする必要がある。
湿疹などの「炎症性疾患」と外傷・熱傷などの「創傷」に分けて、外用薬の使い方についての本を紹介する。
ここがツボ!患者に伝える皮膚外用剤の使い方
難易度★(他科志望の研修医向け)
主にステロイド外用について。薬剤師向けの本だが、研修医などの初心者におすすめ。実際の処方例が30例解説されていてイメージしやすい。
初心者はこの教科書から
褥瘡外用療法のキホン
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
創傷治療の外用薬について。褥瘡治療薬の使い方についてしっかり勉強すれば、その他の創傷治療にも応用できる。結構マニアックなところまで記載があるので、マニアも満足するはず。
かなり詳しい!
治療薬②:内服ステロイド
皮膚科では天疱瘡や薬疹、重症の湿疹などでも内服ステロイドを使う場面が多い。使い方や副作用対策をマスターしておく必要がある。
膠原病診療ノート
難易度★(他科志望の研修医向け)
膠原病の教科書では一番有名な「膠原病診療ノート」。皮膚科では天疱瘡などの治療で内服ステロイドをよく使う。膠原病を診ることはなくても、ステロイドの使い方の章は一読する価値あり。
尊敬するmedtoolz先生もこの本を薦めている。
有名な名著!
治療全般
基礎をマスターしても外来診療はできるようにならない。治療の実践的な教科書を読む必要がある。
特に診療上の注意やピットフォールを解説している本が役に立つ。
診療所でみる皮膚疾患
難易度★(他科志望の研修医向け)
皮膚科治療の教科書の中で、一番初心者向けでわかりやすいと思う。無機質な教科書ではなく、叙述的に書かれている点がポイント。
通読できる成書!
皮膚のトラブル解決法
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
「診療所でみる皮膚疾患」と同じ中村健一先生の本。「診療所でみる皮膚疾患」の中から、患者への説明のコツや陥りやすいミスにポイントをしぼって書かれたコンパクトな本。読み物として面白く、かなりオススメ。
皮膚科では珍しい読み物タイプの教科書
疾患別治療
頻度の高い疾患に関しては、各疾患に特化した教科書を読むとよい。「水虫」と「イボ」についての教科書を紹介した。
毎日診ている皮膚真菌症
難易度★(他科志望の研修医向け)
白癬診療の教科書の決定版の教科書。医学生や研修医の指導にも使える。白癬と湿疹を鑑別できれば皮膚科の50%をカバーできる。
真菌症の決定版!
疣贅のみかた治療のしかた
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
イボ患者は結構多いが決定的な治療法がないので、いろいろな治療法をためすしかない。
20種類以上の治療法が300ページ以上にわたり詳細に解説されているので役に立つ。
イボだけでこの厚さ!
手技手術
皮膚科医がどこまで手術をするかはかなり個人差がある。
世界的に有名な研究をしている皮膚科医はたくさんいるが、手術もしているというケースは稀だろう。
しかし小外科手技は皮膚科の必修技能であり学んでおく必要がある。
外傷処置・小手技の技&Tips
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
手術の技術は小さなノウハウの積み重ねという部分があり、枝葉の知識が重要になることが多い。
そんなノウハウを座学で学ぶことができる本が「外傷処置・小手技の技&Tips」。教科書には意外と載っていない知識が豊富に書かれていておすすめ。
成書には書いてないTips満載
形成外科診療ガイドライン3創傷疾患
難易度★(他科志望の研修医向け)
皮膚科では軽度の外傷を診る機会は多い。
しかし基礎を教えてもらうことが少なく自己流でやっている部分があるため、エビデンスを知っておくことは大切である。
縫合のゴールデンタイム、予防的抗菌薬、汚染創の一期的縫合などは、一度ガイドラインで知識を整理しておくとよいと思う。
形成外科ガイドラインも読んでおこう!
診断学
皮膚科は直感的診断に偏りがちなので、診断に至るまでの「思考過程」も勉強しておくと幅が出ると思う。
誰も教えてくれなかった皮疹の診かた
難易度★~★★★(医学生、研修医、全科の医師)
皮膚科診断の教科書は「見た目一発診断」のようなものがほとんどで、診断法の解説はほとんど書いていない。
この本は診断の思考過程を体系的に解説した本で、皮疹を見た時に、どこに注目して、何を考えばいいかが詳しく解説されている。
診断トレーニングに進む前に、一度読んでおくといいと思う。
直感的診断から脱するために!
皮疹の因数分解・ロジック診断
難易度★★★(皮膚科専門医)
病理所見に基づいた皮疹のみかたを解説した教科書。
皮疹をみる上での新しい視点を持たせてくれる面白い本である。
しかし実際の臨床に応用するのはかなり難しいので、ある程度皮膚科診療に慣れてから読むのがオススメ。
かなりマニアックだけど面白い
診断のトレーニング
皮膚科のよいところはクイズ形式の教科書で診断のトレーニングができるところ。
「知っていれば一目でわかる疾患」と「色々な鑑別が必要になる疾患」の2種類について別の教科書で勉強する必要がある。
皮膚科医の見る技術
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
症例数:100症例
表に問題があり、ページの裏に答えと簡単な解説が書いてある。
耳介偽嚢腫や外歯瘻、尿膜管遺残症など、知っていれば一目でわかるが皮膚科の教科書には書いていない大事な疾患がたくさん載っている。
診断のトレーニングならコレ!
皮膚科の似たもの同士
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
症例数:39項目、89症例
鑑別診断の重要なポイントを学べる本。
そっくりな疾患の写真が左右に並べてあり、比較しながら勉強できる。
例えばヘルペスと固定薬疹は見た目がかなり似ていて、見た目だけで鑑別することは難しい。常に念頭に置いて病歴を聴取する必要がある。
症例数は少ないが疾患のチョイスが絶妙で、個人的に気に入っている本。
他にはないコンセプト!
アトラス(図版)
見た目で診断する皮膚科ではアトラスが必須。分野別のアトラスもたくさんあるが、まずは基本的な1冊をおさえたい。
皮膚病アトラス
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
おそらく一番使われている皮膚科のアトラス。
ただし持っているだけでは役に立たない。皮膚科診断力を上げるためにはアトラスを使い込む必要がある。
アトラスの定番はこれ!
病理
皮膚科の一番の特徴は病理を自分で診断すること。皮膚病理は特殊な用語も多いのでとっつきにくくて苦手な人も多い。
わかりやすい本を1冊読むとだいぶ違う。
皮膚病理イラストレイテッド①炎症性疾患
難易度★★(皮膚科志望の研修医、皮膚科医向け)
病理のわかりやすい解説本。
病理写真を載せて解説している教科書が多い中、イラストで所見が解説してあって理解しやすい。皮膚病理がイマイチ分かっていない人は是非読んでほしい。
わかりやすい!
皮膚科オススメ本のまとめ
皮膚科教科書のおすすめを15冊を紹介した。
皮膚科医だけでなく医学生、研修医にもオススメできる本である。さらに看護師、薬剤師などのコメディカルの方にも参考にしてもらえれば。
他にもいくつかオススメ教科書・参考書があるので、今後も少しずつ紹介していく予定。
▼厳選5冊の簡易版はこちら▼
▼その他のオススメ教科書はこちら▼
詳細レビュー一覧
1. アトラス
2. 病理
3. 治療薬(外用薬)
4. 治療薬(内服ステロイド)
5. 治療全般
6. 疾患別治療
7. 手術手技
8. 診断のトレーニング
9. 診断学
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