引退発表した小室哲哉(TK)。
昔は小室哲哉はギラギラしてて嫌いだったけど、最近ちょこちょこテレビに出ていて「枯れた感じ」になっていた。
だいぶ印象が変わってて気になったので、少し前に本を読んだ。
小室哲哉が詐欺事件(2008年)で逮捕された翌年に発売された本で、拘置所、裁判の様子と絶頂時の仕事を振り返るという内容である。
小室哲哉の詐欺事件とは
当時、出した曲はすべてミリオンヒットの小室は巨額のお金を稼いでいた。
しかしそれによって金銭感覚が麻痺して、消費を繰り返すようになったという。
さらに離婚した前妻への慰謝料、養育費が8億近く発生した結果、18億もの借金を負ってしまった。
借金が返済できなくなった小室は、「著作権を売る」と言って投資家から5億円を騙し取った。
というのが事件のあらまし。
実刑もありうるような事件であったが、小室が「今後更生し音楽界の発展に寄与する」と宣言したことで実刑を免れ執行猶予がついたのだという。
エイベックスの社長が「小室が実刑を受けることは音楽界にとっての損失であり、責任を持って小室が音楽を作れる環境を整える」と言ったことも後押しになったようだ。
この経緯を考えると安易に引退してよいのかな、とは思う。
小室プロデュースのすごさ
いい曲は当たり前であって、そこにもうひとつ特徴なり個性なり、あるいは話題性が必要だとも考えた。
「いい曲」と「企画」の両方がヒットの条件だ。
この本を読むと、小室哲哉のヒットの理由がプロデュース力にあることがわかる。
売れるためには曲のよさだけではなく、演出も大事らしい。
例えばTRFを5人組にしたのは、音楽番組のカメラ割りの定番を崩すため。
(マツコの知らない世界~小室プロデュースの世界より)
「歌唱シーンはボーカル、間奏に入るとバンドメンバーを撮る」という定番の撮り方ができないようにダンサーとDJを配置し、新しい映像を作り出した。
テレビ映りまで計算に入れた緻密な計算がヒットを生んだ。
以前紹介した「芸術家・村上隆」も作品自体より演出に力を入れていると語っていて、演出力はあらゆる分野で大事な能力なのだとわかる。
医者にとっても演出力は大事である。
Jポップの退化
この本で面白かったのは、Jポップにおいて小室が反省しているという点。
当時は、いかに簡単な表現にするか、いかに伝わる速度を上げるかに囚われていた。その結果、NHKの「みんなのうた」に接近していくわけだ。
Jポップがわかりやすさを求めすぎ、幼児性を強めてしまった。
より売れるためには万人に受け入れられる必要がある。
しかしわかりやすさを追求しすぎて、音楽が幼稚になってしまったことを小室は反省している。
でも小室の曲にはまだミュージシャンとしての音楽性があったと思う。
90年代、ミリオンヒットを量産している頃、こんな指摘もあった。
「小室がやっているのは音楽ではない。ビジネスだ。」
しかし、そんな時代でも、音楽的な試みを絶やしたことはないと、今でも言える。
最近はさらに幼児性が強まってしまった。音楽性よりお金のため、悪びれずに幼稚な方向へ推し進める「悪い大人」がいるんだろう。
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