前回保湿剤、スキンケアの重要性についてまとめた。
しかし今後保湿剤は保険から外されてしまう可能性もある。
ではヒルドイドが保険で使えなくなった場合、どういう保湿剤を使うのがよいだろうか。
皮膚科医は市販薬についても十分に知っておく必要があるだろう。
今回、市販の保湿剤をまとめて効果やコスパなどについて比較してみた。
保湿剤の種類
保湿剤には保湿成分が入っていない皮膚の保護を目的とするもの(ワセリン)、保湿成分の入ったもの(尿素やヒルドイドなど)に分けられる。
- エモリエント:保湿成分なし
- モイスチャライザー:保湿成分あり
2つを比べると保湿成分が入ったもののほうがよかったという論文がある。
(皮膚科の臨床56(11)1628, 2014.)
ワセリンと比較してパスタロンソフト(尿素)、ヒルドイドソフトの方が効果が高かったという結果。
他にもワセリンよりヒルドイドの方が保湿効果が高く、効果の持続時間が長いという論文もある(Dermatology. 200(4): 308, 2000)
実際の臨床効果はどうか分からないが、この結果からはモイスチャライザーを使用するほうがよさそうである。
保湿成分はどれがよいのか
保湿剤の成分は種類がたくさんあるが、論文をみるとセラミド配合がよい感じである。
セラミド配合のクリームが、尿素、ヒルドイドと同等の効果があったという報告を紹介。
①セラミドクリームvs尿素クリーム
アトピー性皮膚炎の症状改善率
- キュレルクリーム 60%
- ウレパール 55%
西日本皮膚科64 巻 (2002) 5 号 p. 606-611
②セラミドクリームvsヒルドイド軟膏
アトピー性皮膚炎の症状改善率
- キュレルクリーム 65.5%
- ヒルドイド軟膏 41.4%
西日本皮膚科61 巻 (1999) 5 号 p. 671-681
これらの結果からは、セラミド入りの保湿剤は保険適応の尿素やヒルドイドと同等の効果があると考えられる。
そこでセラミド入り中心に市販の保湿剤をまとめる。
コスパについても比較した。(ヒルドイドローション23.7円/gを参考に)
クリームやローションなど色々な剤型があるが、今回はローションに統一。
市販のセラミド配合保湿剤
セラミド入り保湿剤を3種類紹介。
キュレルローション(約5.9円/ml)
ドラッグストアなどでもよく見かける商品。値段も手ごろで手に入りやすいのが特徴。
コラージュDメディパワー(約18.7円/ml)
皮膚科への営業に力を入れている会社で、営業の人がよく来てサンプルをたくさんくれる。
約18.9円/mlとかなり高めなのが難点。
ベーテル保湿ローション(約3.3円/ml)
下記の教科書で紹介されていた保湿剤。
あまりメジャーではないが一番安い。ただ店で売っているのを見たことはないので、手に入れる方法はネットしかないかも。
セラミド以外の保湿成分配合保湿剤
セラミド以外でも効果を実証する研究があるものを紹介。
オリゴマリンローションS(約10.5円/ml)
こちらも皮膚科への営業に力を入れている会社の商品。
頻繁に営業の人が来てサンプルをくれるので、どこの皮膚科にもサンプルが置いてあるはず。
若干高め。
「オリゴマリンのアトピックド ライスキンへの使用経験(皮膚の科学,2004; 3: 73―83.)」
2eミルキーローション(約8.7円/ml)
高めの商品だったが(2e乳液 約15.7円/ml)、最近安めのミルキーローションが発売されて手ごろになった。
有名なアトピーの予防の論文で使用された保湿剤。
「Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis( J Allergy Clin Immunol 2014; 134:824-30.)」
総括
コストパフォーマンスを比較するとベーテルが一番安い。ただ手に入りやすさも考慮するとキュレルが一番バランスがいい気もする。
コスパ
- ベーテルローション(3.3円/ml)
- キュレルローション(5.9円/ml)
- 2eミルキーローション(8.7円/ml)
(参考:ヒルドイドローション 23.7円/g)
実際に全部使ってみたわけではないので、使用感も比較した上でさらに検討してみたい。
市販の保湿剤として、まずこれらを使ってみるといいかもしれない。
スキンケアの重要性についてはこちら>>保湿剤の有効性とエビデンスをまとめる
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