前回、診断がわからないときに「よく話をきく」とか「もう一度診察し直す」とかではなく、もっと実践的な方法がないのかを考えた。
今回は皮膚科において診断がわからないときにどうすればよいのか、参考になりそうな論文をいくつか紹介する。
1.臨床診断に苦慮する症例で念頭におくべき疾患
臨床診断に苦慮する症例で念頭におくべき疾患
- 薬疹
- 膠原病
- サルコイドーシス
- 悪性リンパ腫
- 梅毒
Visual Dermatology 5(3): 262-267, 2006.
特に薬疹はありとあらゆる皮膚疾患を模倣する。
「薬疹を勉強することは実はすべての皮膚疾患を勉強することだ」と言われている。
またサルコイドーシスも「さまざまな疾患のimitator」でありサルコイド結節がどの深さに形成されるかによって臨床型はバラエティに富む。
これらの疾患を念頭に置くことは大事だと思う。
2.なにかわからない皮疹をみた時の鑑別疾患
なにかわからない皮疹をみた時の鑑別疾患
- 結核
- 梅毒
- 深在性真菌症
Visual dermatology 7(10): 1106-1109, 2008.
皮膚疾患の鑑別を考えるうえで、まずは頻度の高い疾患から考慮するべきだが、ときに上記の感染症もあるので積極的に検索を進めていくことが必要である。
非結核性抗酸菌症や深在性真菌症は菌量が少なく生検組織の染色では診断できないことが多い。
確定診断のためには培養検査が必要であり、疑っていないと診断がつかないという点に注意が必要である。
3.湿疹が治らないときにどう考えたらよいか
湿疹が治らないときにどう考えたらよいか
- 診断が間違っている:真菌、酒さ
- 何か原因がある:接触皮膚炎
- 生活習慣・機械的刺激:過度な手洗い、掻きむしるクセ
- 指示通り外用薬を使用しない
皮膚科の臨床59(10)1517, 2017
湿疹が治らず診断がわからなくなることはよくある。
実際には診断が間違っていることは少なくて、接触皮膚炎や機械的刺激を疑う必要がある。
また盲点は『皮膚科患者の薬の使用率は実際どれくらい?』の記事に書いたように、きちんと薬を塗っていない患者が意外と多いということである。外用指導も大事である。
患者の外用使用率を上げることができれば名医になれる。
関連記事>>皮膚科の名医になるための条件は?【理想の医師像】
まとめ
「皮膚科は見た目で診断できるのが魅力」なんて言われるが見た目では区別がつかないことも多い。
経過などの臨床情報で鑑別できる場合もあるが、なかなか難しい。
そんなときはこれらの知識が役に立つかもしれない。
コメント