皮膚科は見た目で診断するのでアトラスが必須である。
皮膚科全分野のアトラスは以前紹介したが(>>皮膚病アトラス)それだけでは対応できない場合も多い。
そこで今回はおすすめの分野別アトラスを紹介する。
分野は全部で5つ、全8冊。
- 爪
- 脱毛症
- 口腔粘膜
- 外陰部
- 血管腫
▼前回の記事▼
1. 爪疾患
爪疾患はとても難しい。
爪扁平苔癬やtwenty nail dystrophyなど特殊な病気がたくさんあるが、教科書での扱いは小さい。
そのため爪に特化した教科書で勉強する必要がある。
また患者に納得してもらうためにアトラスを見せて説明することも大事だと思う。
爪-基礎から臨床まで
爪にこだわりぬいた一冊。
あらゆる爪疾患の原因から治療まで詳細に記載されていて、現時点ではこれ以上の教科書はない。
写真よりも文章がメインの教科書なのでアトラスとしては若干使いにくさはある。
爪疾患カラーアトラス
「基礎から臨床まで」よりレイアウトが見やすく、アトラスとしては使いやすい。
自分は患者への説明時には主にこちらを使用している。
しかしすでに絶版になっているため中古で手に入れるしかない。
2. 脱毛症
脱毛症の患者は結構多いが、脱毛症に特化した本は少ない。
円形脱毛症だけではなく、休止期脱毛や瘢痕性脱毛なども知っておかなければいけない。
症例から学ぶあなたにもできる脱毛外来
「瘢痕性脱毛症」から「Postmenopausal frontal fibrosing slopecia」まで記載されている数少ない脱毛症の教科書。
写真もたくさん載っている。若干低画質。
3. 口腔粘膜疾患
口腔内の疾患は口腔外科や耳鼻科などとも被る領域なので、皮膚科で診るべきなのか迷うところ。
カンジダ症や天疱瘡では皮膚科メインになるが、口腔内の悪性腫瘍は口腔外科や耳鼻科が主科となる。
他科疾患をしっかりと鑑別できるようになっておくことが大事。
口腔粘膜病変アトラス
最近出版された本で写真がとてもキレイ。
口腔粘膜疾患は炎症性疾患と腫瘍がメインになるが、色素性病変も意外と大事である。
Peutz-Jeghers症候群や、写真を見つけるのに苦労するLaugier-Hunziker-Baran症候群なども載っていて便利。
アトラスさくま
小児の咽頭所見だけをあつめたマニアックなアトラス。
プロが診れば咽頭所見でアデノ、コクサッキー、EBなどを鑑別できるらしい。
日常診療で咽頭まで診ることは少ないが知っておくと意外に役に立つかも。
4. 外陰部疾患
外陰部疾患は真珠様丘疹症や縫線嚢腫、硬化性リンパ管炎など経過観察でよいものが多くあり、患者への説明のためにアトラスを使用する。
しかし一般の教科書には記載されていないことも多いので分野別のアトラスが必要。
またクリニックでは亀頭包皮炎もよく診るのでカバーしておきたい。
外陰部疾患 プライベートパーツの診かた
写真がキレイで見やすいアトラス。
主に泌尿器科医や婦人科医向けに書かれているので皮膚科疾患は少ないが、淋菌やクラミジアなどもあって勉強になる。
でも開口部形質細胞症や固定薬疹は載っていて日常診療では十分。
悪性腫瘍が載っていないのが難点ではある。
外陰部皮膚疾患アトラス
レイアウトはあまり見やすくはないが、掲載されている疾患が多い。
悪性腫瘍に加えて紅色陰癬や陰部の乾癬などが載っているのが長所。
特に亀頭部に限局した乾癬の写真が載っている教科書は少ない。
しかし絶版になっている。
5. 血管腫
血管腫はとても難しい。
乳幼児では生検が難しい場合も多く、見た目である程度の診断と治療方針を決定する必要がある。
また母斑症と関連することもありSturge-WeberやKlippel-Trénanay-Weberなども知っておかなければならない。
そこに頼れるアトラスがあると安心感が出る。
血管腫・血管奇形臨床アトラス
「多くの疾患を網羅することを目指しました」と書かれている通り、ありとあらゆる血管腫が紹介されている。
70種類近くの血管腫と母斑症の臨床写真、病理、治療が網羅されており、血管腫を診る医師は皆が持っておくことを推奨する。
まとめ
皮膚科の分野別アトラスを紹介した。
一部で絶版のプレミア本もあるので、購入はお財布と相談して。
診療の現場では「教科書で1行程度しか記述がない疾患」が大事になってくることがよくある。
皮膚科医は多くの疾患の臨床症状を把握しておく必要があるので、分野別のアトラスにもたくさん目を通しておいたほうがよいと思う。
つづく
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