「目のまわりが腫れた」といって皮膚科を受診した患者が、眼科に診てもらうと霰粒腫だったりすることがある。
眼科疾患で皮膚科を受診する患者は結構多い。
そのため皮膚科医も眼科のことを勉強しておく必要がある。
「それは皮膚科じゃないですよという病気」第3弾は麦粒腫と霰粒腫。
▼前回の記事▼
麦粒腫と霰粒腫
麦粒腫と霰粒腫は眼瞼に付属する腺組織に生じる病変である。
睫毛に付属するZeis腺やマイボーム腺に生じる。
>>眼瞼や涙器の病気
これらを以下の書籍を参考にしてまとめてみる。
麦粒腫とは
眼瞼に付属する腺組織の細菌感染症。
睫毛に付属する皮脂腺(Zeis腺)や汗腺(Moll腺)に感染が生じた場合が外麦粒腫。
マイボーム腺に感染が生じた場合は内麦粒腫と呼ばれる。
霰粒腫とは
マイボーム腺の非感染性の肉芽腫性炎症。
眼瞼板内に限局しているものと、眼瞼前板を破壊し、眼瞼皮膚にまで炎症が及ぶものがある。
麦粒腫と霰粒腫の鑑別
麦粒腫と霰粒腫は鑑別が難しいこともあるらしい。
AとBどちらが麦粒腫、どちらが霰粒腫でしょう。
両者の臨床所見が類似することがあり、ベテランの眼科医でも麦粒腫と霰粒腫の鑑別が困難な例をしばしば経験する。
Visual dermatology. 12(2) p113-117, 2013
霰粒腫が進行すると眼瞼皮膚が発赤し感染症のように見えることがある。その場合外麦粒腫との鑑別が困難になるそうだ。
答え⇒Aが麦粒腫、Bが霰粒腫だが、肉眼的には見分けがつかない。
A:外麦粒腫
確かに見分けがつかない。
治療法も異なっているので安易に切開などはしない方がよいだろう。
・麦粒腫の治療の基本は抗菌薬の投与である。
・霰粒腫の治療の基本は切開と掻爬による手術である。経結膜法と経皮法の2つがある。
Visual dermatology. 12(2) p113-117, 2013
鑑別法は抗菌薬の反応をみることらしい。
麦粒腫と霰粒腫の鑑別がつかない時は、まず抗菌薬の点眼と内服を処方し、反応をみる。
抗菌薬に反応した例は麦粒腫であり、反応しない例を霰粒腫と診断する。
Visual dermatology. 12(2) p113-117, 2013
しかし皮膚科医が鑑別することは難しいと思うので、素直に眼科の先生にお願いする。
なぜか「霰粒腫なので皮膚科で治療してください」と言われることもあるが…。
まず眼科疾患だとわかることが大事だと思う。
涙嚢炎
もう一つの要注意疾患は涙嚢炎。
涙嚢炎とは
鼻涙管が閉塞し、涙嚢に貯留した分泌液に細菌感染を起こして発症する。
根本治療は手術である。涙嚢鼻腔吻合術を行う。
Visual dermatology. 12(2) p118-120, 2013
急性涙嚢炎では皮膚の発赤腫脹を伴うため皮膚科を受診する場合がある。
>>涙嚢炎
いかにも切開排膿してしまいそうな臨床像だが、顔面皮膚からのドレナージは皮膚瘢痕を残すため、勧められないとのこと。
この病態を知っていればスムーズに眼科に紹介することができる。
まとめ
皮膚科は他科疾患の患者が紛れ込んでくることが多いので、色々な科の疾患を知っておく必要がある。
今回は皮膚科でも意外とみることがある眼科疾患について解説した。
次回は正直あまり診たくない難しい疾患、舌痛症と外陰部疼痛症について。
つづく
▼それは皮膚科じゃないですよという病気▼
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