宮崎アニメの崩壊は「ハウルの動く城」で表面化した。
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そして「崖の上のポニョ」でさらにエスカレートしてしまったように思う。
今回のジブリレビューは崖の上のポニョについて。
崖の上のポニョの解説・感想
「崖の上のポニョ」の制作秘話
もともと「崖の上のポニョ」は子どものための作品として企画されたそうだ。
「もののけ姫」や「ハウルの動く城」など大人向けの作品を制作してきた宮崎駿は、「トトロ」のような子ども向けの作品を再び作ることを目標にした。
「トトロを上回るキャラクターが作りたい」
「トトロの「さんぽ」のように、後々まで歌いつがれるような主題歌を作りたい」
目標はトトロを超えること。
企画書からも宮崎駿の意思が感じられる。
崖の上のポニョの企画書
対象:幼児とすべての人々へ
内容:類例のない空想豊かな楽しい娯楽作品
可愛らしいポニョのデザインと主題歌「ポニョの歌」は好評で、「崖の上のポニョ」の期待は高まった。
実際序盤は初期の宮崎アニメを期待させる雰囲気がある。
しかし物語が進むにつれて暗雲が立ち込める。
「崖の上のポニョ」が意味不明な理由
宮崎がこだわったのは「新しい波の表現」。
しかしそれは子ども向けとしては不釣り合いなリアルなものになってしまった。
この表現は確かにすごいが、「楽しい娯楽作品」の雰囲気ではない。
鈴木敏夫は「狂気」と表現している。
僕はあの津波の描写を見て「これって本当に子どものためのものなのかな?」と思ったのも事実です。あの表現には、ある種の狂気も宿っていますよね。
そしてストーリーは意味がわからなくなっていく。
津波で水没した町を進むと、老人たちが元気に過ごす謎の海底世界へ到着する。
この海底世界のモチーフは死後の世界。
制作当時、宮崎駿は死後の世界に魅せられていたという。
終盤、おばあちゃんたちが、あの世みたいなところへ行くでしょう。当初の絵コンテでは、そのシーンが延々と描かれていたんです。
自分があの世を見たいから描いたんでしょう。
仕方なく、プロデューサーとしてレフェリーストップをかけました。
子どものための映画というコンセプトを捨てて、自分の興味へと走ってしまったためストーリーが破綻してしまったようだ。
初期のコンセプトからすると失敗作と言えるのではないか。
宮崎駿は以前「単純な話は作れるが、あえて作っていない」と語っている。
「カリオストロの城」は典型的な枠の中にピタっとはまるように作ったんです。今もそういうこともできるんですよ。できますけど、それはもうおもしろくないんですよ。
(ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し)
しかし宮崎にはもうトトロのような映画は作れないということがはっきりしてしまったと思う。
どうしても複雑なテーマを映画に取り入れたくなってしまうので、単純な話を作ることができない。
ならばあえて複雑な作品を作ったらどうなるのか。ここで鈴木敏夫が暗躍する…。
「風立ちぬ」へつづく。
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