ミステリーベスト10のネタバレ感想シリーズ。
今回は第8位のりら荘事件を紹介する。
タイトルは創元推理文庫版だと「りら荘事件」で、角川文庫版だと「リラ荘殺人事件」。
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1959年に出版された作品で、本格ミステリーの古典的名作といわれている。
鮎川哲也は主にアリバイ崩しのミステリーを書く小説家で、「りら荘事件」は例外的な作品のようだ。
比較的キワモノが多くなってしまったミステリーベスト10の中で唯一の本格ミステリーである。
確かに状況設定や登場人物の会話などは古臭さもあるが、今読んでもミステリーとしての面白さは古くなっていない。
りら荘事件のあらすじ
あらすじ
芸大の学生7名が集まった「りら荘」で殺人事件が発生。死体の横にはスペードのAが置かれていた。
そしてスペードの2が郵便受けから見つかり、第二の殺人が起こる。
山荘モノ、見立て殺人モノの原点とも言える設定である。
「なぜトランプが置かれるのか」がメインの謎となる。
この見立てトリックが美しい。
以下ネタバレ感想。
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りら荘事件のネタバレ感想
とにかく人が死にまくるのが特徴で、犠牲者は7人。
こういう館モノは中盤が退屈になることが多いが、展開が速いのでまったく飽きさせない。
推理する暇もないくらい次々と殺人が起きる。
7つの殺人事件のすべてでアリバイが無い人間はいない。
6つの事件で犯行が可能な安孫子が容疑者として逮捕されるが、真犯人は別にいる。
それを解くカギが「トランプが置かれる理由」である。
こういう見立て殺人にはいくつかのパターンがあるが、自分が気に入ったのはりら荘のトランプには3つの理由があるということだった。
トランプの謎
- 事故を殺人に見せかける
- 殺人の順番を誤認させる
- 同一犯の犯行と誤認させる
これらを一つずつ解き明かしていくと犯人が絞られてくる。
りら荘事件のトリック図解
①事故を殺人に見せかける
♠A須田の死亡は殺人ではなく事故。
トランプを置くことで、偶然起きた事故を殺人に見せかけた。
尼は死亡推定時刻にりら荘にいたためアリバイが成立していた。
しかしトランプが置かれたのは死亡後だったため、アリバイが消失する。
②殺人の順番を誤認させる
本当は♠3橘の殺害は♠2松平の前。
トランプで橘の殺害を松平の後と誤認させることで、アリバイを持つことができた。
尼は松平殺害後のアリバイがあるため容疑者から外されていたが、松平殺害前のアリバイはない。
橘の死体を川につけておくことで死亡推定時刻がわからないようにしていた。
③同一犯の犯行と誤認させる
しかし尼は7番目の犠牲者となったため、容疑者からは外される。
実際は♠7尼の殺人のみは別の犯人によるものであり、同一犯の犯行によるものと誤認させるためトランプが置かれた。
このようにみていくと尼が犯人として浮かび上がるが、♠2松平の殺人の謎が分からない。
これがネックで自分は真相が見抜けなかった。
④ココアの謎
尼と松平の2人がココアを飲んだが、死んだのは松平だけ。
となると毒は後から松平のココアにのみ入れられたことになる。
松平のココアに毒を入れられたのは安孫子のみ。
このトリックは「尼に毒の耐性があった」ということ。
(ハンターハンターより)
毒はココアの粉にあらかじめ混入されており、尼も毒入りココアを飲んでいた。
あらかじめ毒を入れておくことは全員に可能だった。
これで犯人が尼ということが判明する。
ココアのトリックには無理があるとは思ったが、見立てトリックの美しさには感動させられた。
本格ミステリー好きにはおすすめの一冊である。
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