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妊娠中、授乳中の抗ヒスタミン薬「薬物治療コンサルテーション」皮膚科医のオススメ教科書⑱

 

少し前に妊婦加算の廃止が話題になった。

妊娠した女性を診察するのは結構気を遣うので、患者に負担させるかは別として医療機関に何らかのインセンティブがあっても良い気はする。

 

診察のときに一番問題になるのが薬について。

トラブルになる可能性もあるので、かなり慎重に説明する必要がある。

万が一流産や先天異常が発生した場合、薬が原因と思われてしまう可能性がある。

流産や児の先天異常の自然発生率はそれぞれ約15%、2~3%といわれている。もし奇形をもつ児が誕生したとすると、「何でこうなったのか」と本人や家族は原因を求める。

妊娠初期に薬剤を使用していたとすると、必ずといってよいほどそれが原因と思い込まれる。

薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳

 

添付文書をみるとたいてい「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,投与を避けることが望ましい。」「授乳中の婦人には,投与を避けることが望ましい。」と書かれている。

しかしそれでは治療ができないので、他の情報から判断していく必要がある。

そんなときに役に立つのがこの教科書。

 

疫学的にほぼ安全に使用できると思われる薬が明記されていて、責任回避のために微妙な書き方がされているということがない。

はっきりと「大丈夫」と書かれているのが素晴らしく、これを基準に薬を選べばほぼ問題ないのではないかと思う。

今回は妊婦と授乳中の女性の抗ヒスタミン薬について、参考書籍とサイトからまとめてみた。

妊娠中と授乳中に使える薬剤の図

 

▼前回のオススメ教科書▼

皮疹の因数分解・ロジック診断【皮膚科医のオススメ教科書⑰】
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妊婦の抗ヒスタミン薬

 

妊婦の薬剤について参考になるのは、教科書とFDA薬剤胎児危険度分類基準。

 

  • 薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳
  • FDA薬剤胎児危険度分類基準

 

「薬物治療コンサルテーション」で安全とされているのは、クラリチン、ジルテック、ザイザルの3剤。

 

「薬剤胎児危険度分類基準」は米国FDA(米国食品医薬品局)が作った基準。

この基準は2015年6月に廃止されているが、わかりやすいので参考のために記載する。

FDA薬剤胎児危険度分類基準

A:ヒト対照試験で、危険性がみいだされない

B:人での危険性の証拠はない

C:危険性を否定することができない

D:危険性を示す確かな証拠がある

X:妊娠中は禁忌

(アレルギー 63(5): 661, 2014)

 

クラリチン、ジルテック、ザイザルがB。これら3剤は「薬物治療コンサルテーション」でも安全とされており、処方しやすい薬剤だと思う。

第一世代のポララミンやペリアクチンもFDA基準ではBランクだが、あえて第一世代を使う意味はないだろう。

妊娠中に使える抗ヒスタミン薬の図

授乳中の抗ヒスタミン薬

 

授乳中の薬に関しては、妊娠中よりも情報が多い。

 

  • 薬物治療コンサルテーション妊娠と授乳
  • 国立成育医療研究センターのサイト
  • 授乳危険度分類

 

「薬物治療コンサルテーション」に記載されているのは、クラリチン、ジルテック、ザイザル、アレグラの4剤。

 

国立成育医療研究センターのサイト(授乳中に安全に使用できると考えられる薬)は患者も見ることができるので処方時の説得力が増す。

「授乳中安全に使用できると考えられる薬」は、個々の薬についてこれまでの情報をもとに評価を行い、授乳期でも安全に使用できると考えた薬を載せています。

 

サイトに記載されているのはクラリチン、アレグラ、デザレックスの3剤。

 

最後に「授乳危険度分類」はアメリカの基準。わかりやすくランク分けされている。

授乳危険度分類

L1:安全

L2:比較的安全

L3:おそらく安全

L4:おそらく危険

L5:危険

 

L1はクラリチン。L2はジルテック、アレグラ、デザレックス。ザイザルはL3になっている。

 

3つの基準すべてで安全性が高いとされているのはクラリチン。

授乳中に使える抗ヒスタミン薬の図

まとめ

 

海外では、安全性を説明しても授乳中の患者の15%が薬を服用しなかったという報告がある。

(Ann Pharmacother. 27(1): 40, 1993)

妊娠中や授乳中の薬の処方はデリケートである。

 

薬剤部に確認すると添付文書から「処方は不可です」と言われてしまうこともたまにある。

これらの情報を基に妊娠中や授乳中の女性の処方を考えていけば間違いはないと思う。

 

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