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【トリック図解!】ミステリーネタバレ感想「鴉」麻耶雄嵩

 

ミステリーベスト10のネタバレ感想シリーズ。

今回は第10位の「鴉」を紹介する。

 

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ミステリー界の異端児とも言われる麻耶雄嵩。

麻耶ミステリーはクセの強い作品ばかりだが、ミステリーマニアからは絶大な支持を得ている。

いわゆる「問題作」を一貫して書き続けており、独特の世界観と手法的アプローチに強いこだわりを持った癖のある作風でマニアックかつカルト的な支持を得ている。

Wikipediaより

 

ただ一般受けするとは言い難く、自分も最初に読んだ「翼ある闇」には混乱させられた。

どう楽しんだらよいのか分からない。

 

しかし数冊読んでいくうちに、超展開を楽しむ小説なのだということが分かってきた。

麻耶雄嵩にフェアなトリックとか、推理の楽しみなどは求めてはいけない。

麻耶作品読むのも三作目ともなると、最初からもう推理を放棄してオチを純粋に楽しもうという気持ちw

ブックパス作品レビュー

 

そんな麻耶ミステリーの中から、初心者にも理解しやすいと思われる「鴉」をベスト10に挙げた。

「鴉」のあらすじ

あらすじ

珂允(カイン)は弟・襾鈴(アベル)の死の謎を追って、地図に載っていない村に辿り着く。

謎の人物・大鏡に支配された閉鎖的な村で起こる連続殺人。

よそ者としてやって来た主人公は村人から疑惑の目を向けられるが、その中で弟の足取りを追いかけ真実に迫っていく。

 

麻耶ミステリーの中では比較的ストーリがわかりやすく、読みやすい。

そして最後には衝撃(混乱)の結末が待ち受けている。

 

以下ネタバレ感想

ネタバレなしの感想はこちら>>絶対読むべきおすすめミステリーランキング10

 

「鴉」のネタバレ感想

 

物語は3人の視点から語られる。

 

村の殺人事件に巻き込まれながら、弟・アベルの死の謎を探るカイン。

友達の啄雅、朝萩とともに村の殺人事件を調査する少年探偵団・橘花。

橘花の兄である櫻花。

 

  • カイン
  • 橘花
  • 櫻花

 

弟アベルは村では庚(かのえ)と名乗り大鏡の部下として働いていた。

鴉の解説の図

 

表向きの謎は殺人事件の犯人。

これを解くヒントは村で迫害されている「鬼子」。

 

村の人間は皆、色覚異常を持っており、正常な色覚を持つのは教祖「大鏡」のみ。

大鏡以外で正常な色覚を持つものは「鬼子」として迫害される。

色覚異常のヒントはフェアに散りばめられているので、ここまでは自力で推理が可能。

この謎が解ければ犯人が絞られる。

 

「鴉」のトリック図解

 

解決編①

 

殺された野長瀬の家の床の血痕には拭き取ろうとした形跡があった。

しかし床の色は緑で、普通の村人には血と床の色の区別がつかない。

そのため犯人は「村の外の人間」か「大鏡」のみとなる。

カインは大鏡が犯人であり、野長瀬の死を自殺に偽装したと指摘する。

しかしダミーの解決編で真相が二転三転するのが麻耶雄嵩の特徴。

大鏡はすでに死亡していた。

 

解決編②

 

実は大鏡の正体は野長瀬だった。そして野長瀬の死は自殺。

自分の死を他殺に見せかけるため工作を行っていたが、それを発見したアベルが元の状態に戻した。

村の外の人間であるアベルには床の血が見える。血痕を拭き取ろうとしたのはアベルだった。

鴉の犯人の図

しかしこれだけでは終わらない。

本当の見どころは唐突に明かされる叙述トリックである。

 

解決編③

「死んだ庚は実在する人物ではない。あなたの中にいるもう一人のあなたです。ねえ、櫻花さん。」

 

これを読んだときは、頭が混乱させられた。

「カイン=アベル、カイン=櫻花???」

 

櫻花は橘花の兄であるかのように書かれていた。

涼しい秋風を顔に浴びながら駆け足で戻ると、兄さんが家の前に立っていた。

櫻花は弟が家に駆け戻ってくるのを認めた。

 

しかしこの文章はつながっていなかったという叙述トリック。

(現在)涼しい秋風を顔に浴びながら駆け足で戻ると、兄さんが家の前に立っていた。

(15年前)櫻花は弟が家に駆け戻ってくるのを認めた。

 

櫻花はカインだった。橘花の兄は櫻花とは別の人物。

鴉のトリックの解説図

 

さらにカインは大昔に殺した弟をずっと幻想として見ていて(自分のもう一つの人格となっていて)、アベルは存在しなかった。

アベルはカインと同一人物。

つまりカイン=櫻花=アベル=庚。

鴉のネタバレの図

 

登場人物の4人が同一人物という衝撃のトリック。

 

カインは以前アベルの人格で村を訪れていた。

人格が変わる時に人相も変わるので、村の人には同一人物だと気づかれなかった。

これは完全にアンフェアで、見破ることは不可能である。

(ドッピオ=ディアボロを知るジョジョファンでも見破れなかった)

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この無茶なトリックを酷評する人も多いようだ。

しかし自分は、叙述トリックをつきつめるとこんなふうになるのか、と感心させられた。

 

叙述トリックは途中で気づいてしまうと、小説自体がまったく面白くなくなるという欠点がある。

しかし麻耶は「絶対に見破れない叙述トリック」を作ってしまった。

ネット上では酷評も多いが、そう考えると多少の欠点は気にならなくなると思う。

万人には薦められないがミステリーファンなら触れておくべき怪作である。

 

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