「ランチェスター戦略」という企業経営において重要な戦略がある。
もともとは戦争に用いられたものだが、経営にも応用が効くということで有名になったらしい。
簡単に説明すると、小さな会社が成功するための「弱者の戦略」である。
これについて実例を挙げて解説した本を読んでみた。
今回はいろいろな場面で役立つ「ランチェスター戦略」について。
ランチェスターの法則とは
まずはランチェスターの法則について。
近代戦において、軍の戦力は兵士数の2乗となる。
戦力=兵士数²
そのためわずかな兵士数の差でも大きな戦力差となる。
一方古典的な接近戦では、戦力は兵士数に比例する。
戦力=兵士数
接近戦になれば、少ない兵士数でも結構いい戦いができる。
つまり兵力が多い軍は集団戦・広域戦を行うことで被害を最小限に食い止め、確実に勝つことができる。
一方兵力が少ない軍は、接近戦・局地戦を仕掛けないと勝ち目がないということになる。
これが弱者の戦略=ランチェスター戦略である。
ランチェスター戦略は経営にも応用できる。
中小零細企業を兵力が少ない劣勢軍に見立てると、大企業に勝つためには接近戦・局地戦を仕掛ける必要がある。
具体的には3つの方法があるそうだ。
- エリア戦略
- 商品戦略・客層戦略
- 営業戦略・顧客戦略
①エリア戦術
第一は局地戦、エリア戦略。
お客が多いところは敵も多い。
中小企業はライバルが多い中心部ではなく、あえて郊外や田舎で勝負する必要がある。
本で紹介されているのは「過疎地に特化した結婚式業」。
大手が出店していない地方都市で売上を伸ばしている。
競争相手が少ない田舎なら二流でもどうにかやれる。
東京で三流よりも田舎で一流を目指そう
また、都会の中のだれもいかないエリアを狙うのも弱者の戦略。
「歓楽街の不動産に特化した賃貸業」というのも紹介されている。
トラブルが多く他の会社がやりたがらない地域に宝が眠っていた。
強い敵とは戦わない。
商品を差別化できなくても、場所を選ぶことで勝ち目がある。
クリニックで考えれば、都会のど真ん中に開業すると失敗する可能性が高くなるだろう。
②商品戦略・客層戦略
1. 商品を絞る
経営力のない小さな会社がやってはいけないのは「商品の数を増やすこと」。
なんでも扱うのは強者の戦略。
弱者は扱う商品を少なくしなくてはいけない。
例として「痩身に特化した美容外科」が紹介されている。
大手と同じことをしていたら勝てないと、脂肪吸引に専門化して一点突破に成功したそうだ。
2. 売る相手を絞る
客層をむやみに広げすぎると失敗する。弱者は対象を絞って営業。
例として紹介されているのは、EDやAGAなどを対象とした「男性専門の診療所」。
エリート医師は絶対しないニッチな診療科目で差別化をしている。
商品、売る相手を絞ることには社員教育がしやすくなるというメリットもあるという。
マニュアル化もしやすくなり人件費が削減できる。
対象業種を絞ることで業務のマニュアル化を促進。パートでも業務が行えるように簡素化し人件費も削減。
また、なんでも屋の同業と比べ仕入れ面でも有利になる。
クリニックで考えれば、弱者の皮膚科が下手に美容に手を出し商品を増やすと、痛い目をみるのかもしれない。
③営業戦略・顧客戦略
接近戦の営業「アナログ・面倒くさい・泥臭い」で大手と差別化する。
1. 手書きのハガキ
手書きのハガキやニュースレターなど、大手がやらないアナログ戦略でお客との距離を縮めることができる。
「年3回の手書きハガキを5年間続ける営業」が紹介されている。
自分が通院している歯科クリニックからも手書きのハガキが来ている。
2. 勉強会
また「お客に役立つ勉強会を開催する」という方法もあるようだ。
ケーキ屋のケーキ教室、不動産屋の飲食店経営教室など。
お客との距離を縮めるイベントである。
クリニックでは患者向けセミナーを行っているところもある。
3. Web戦略
最近よく行われている「ブログやSNSで個人ブランディングを行う」というのも弱者の戦略である。
ユーチューブ+ブログで売上を伸ばした工作機械販売会社や、マニアックな卵のブログでこだわりを披露する卵販売業などが紹介されている。
本が出版されたときよりも、Web戦略は一般化してきているだろう。
その分難しくなっているとも言えるが…。
まとめ
ランチェスター戦略は経営だけでなく、ブログ運営や研究などさまざまな分野で役に立つ考え方である。
例えば以前紹介した本(>>『研究がうまくいかない』ときに読むと役立つオススメ本4選!)によると、一流の研究者になるためにもニッチな研究分野から始めるのがよいとされている。
ニッチマーケティングで自分の研究を売り込め
やるべきことが見えてくる研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論
まずニッチでローカルな研究分野でトップを狙う。そしてニッチで確立した成功体験をもとに世界へ展開していく。
ランチェスター戦略を意識して、いろいろな分野をみてみると新たな発見があるかもしれない。
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