7月の書評は本3冊とマンガ1冊。
★★★★★5 年間ベスト級
★★★★☆4 読む価値あり
★★★☆☆3 読んでもムダじゃない
★★☆☆☆2 人を選ぶ本
★☆☆☆☆1 時間の無駄?
▼先月の書評▼
「また来たくなる外来」の書評
評価★★★★☆4
いろいろな変わった医学書を出されている國松先生の新作。
やっぱり切り口が面白い。
知識や診療技術に偏りがちな外来診療の中で、あえてファジーな部分にフォーカスした本になっている。
知識や技術ではなければ普通はヒューマニズム的な内容になりがちだが、そこに対するアンチテーゼもあるようだ。「人が好きなわけでも、会話やコミュニケーションが好きなわけでもありません」と明記されている。
システマチックな診断推論と、ヒューマニズム重視のコミュニケーション論の間にあるニッチな部分を深掘するという着眼点はさすがである。
外来診療のコミュニケーションスキルには興味があるので面白かった。
「天才を殺す凡人」の書評
評価★★★☆☆3
「転職の思考法」の北野唯我氏の本で、テーマは才能。
世の中の才能を創造性(天才)、再現性(秀才)、共感性(凡人)の3つに分類して、組織の構造やイノベーションが起こるメカニズムを分析している。
特に3つの才能の図が秀逸で、天才の作った新しいテクノロジーが普及していくまでの過程がキレイに説明される。
凡人には本当にいいものは理解できない。天才の能力を図る指標は「世の中からどれだけ反発されるか」なんて皮肉なものである。
自分は共感性は皆無なので、秀才タイプになるだろうか。秀才は天才に嫉妬するなんてところは、まさにそのまま当てはまっていて耳が痛いところである。
オチが弱い感じはするが、それぞれの立場に応じていろいろな読み方ができる面白い本だと思う。
「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」の書評
評価★★★☆☆3
タイトルはビジネスに関する本のようだが、内容は「お金とは何か」を考察する哲学的なもの。
この本の最大の価値は、マネーの仕組みを解説した1枚のイラスト「お金のピラミッド」である。
お金は価値と信用によって生み出される、信用は換金できるが一方通行、など色々な事柄を盛り込んだこのイラストの完成度には息を呑んだ。
評価経済に関する記載は「お金2.0」より一歩踏み込んだ内容で、中盤までは★4~5くらい。
ただ終盤は失速。
お金でケリをつけてはいけない魂や情緒的なものを大切にするべき・・とかスピリチュアルな感じになってしまっている。
筆者はかつて外資系コンサルティング会社でマネーゲームに関わった立場からか、お金に対する嫌悪感が強いようである。
「ラーメン発見伝の芹沢サン」の書評
評価★★★★★5
以前紹介したラーメン発見伝の総集編。
以前コミックで全巻読んだときは、ビジネス編はむちゃくちゃ面白いんだけど、ラーメンウンチク編は悠長で読むのに苦労した。
ところがこの総集編はウンチク編を飛ばしてビジネス編だけを読むことができる。
読み返してみると、やっぱりこのマンガはスゴイ。「天才を殺す凡人」に書かれている内容も含まれていた。
芹沢の究極のラーメンが売れなかったくだりなんかは、凡人には本当にいいものは理解できないという事実を端的に表している。
至極の傑作選である。
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