皮膚科診療で重要なのは外用指導である。
軟膏を塗るのは面倒なので、しっかり塗っていない患者は意外と多い。
外用療法は軟膏を処方するだけではなく、外用指導とセットで効果を発揮する治療なのだ。
そんなわけで今回は外用指導に役立つ教科書を2冊紹介する。
かかりつけ医のためのこどものアトピー性皮膚炎診療&スキンケア指導
主に小児の診察のコツ(こどもと目線の高さを合わせるとか、まずオヘソを見せてもらうと服を脱がせやすいとか)が書かれた教科書。
他にも全身の診察法と注意すべきポイントが解説されていて、大人の診察にも役立つと思う。
体と四肢だけでなく、うなじや耳の裏、爪をちゃんと切っているかなども確認しなければならない。
また、触りながらインプレッションを伝えて(「ここはよくなったね」、「ここは掻いているみたいだね」など)信頼関係を構築するというテクニックも、大人の診療に役立つだろう。
診察だけでなく、説明法についても詳しく書かれているのもポイント。
外用薬は内服薬と違って、症状が治ったことがすぐにわかるので、薬を自己判断で止めてしまうことが多い。
そのため処方した薬が指示通りに使われる環境をつくらなければならない。
まず回数や量、塗り方までしっかりと説明すること。さらに今後の治癒経過を説明しておくことも、勝手に薬をやめてしまわないためには大切である。
コンパクトな本だけどよくまとまっていて、一通り読むと何か得られるものがあるはず。
アトピー性皮膚炎診療が楽しくなる!
アトピー性皮膚炎は皮膚科の中でもかなり手ごわい疾患である。
そんな手ごわい患者の対応法について、著者の経験がふんだんに盛り込まれた本になっている。
今回は網羅的ではなく、書きたいことだけを書こうと思った。この本では一部を除いて一切文献の引用をしないこととした。
この分野ではエビデンスよりも経験談のほうが役立つ場合も多い。
例えばよくあるこんなシチュエーション。
- いろいろな医療機関や民間療法を転々としてきた初診患者への第一声は?
- 本当は来たくて来たんじゃないという攻撃的な患者への対応
これらの対応法が詳しく述べられている。
- →初球は外角低めのボール球 出身地や趣味などアトピーとは関係ないところから
- →フェイントをかける 「素直な患者さんばかりだと面白くないんだよね」
絶対的に正しい解答ではないだろうし、そんなものは存在しないと思うが、一つの解答例として参考になると思う。
いかにして患者との信頼関係を構築するか。
それは患者想いとかそういう精神論的なものではなく、一種のテクニックである。
他にも現場で悩むする様々なシチュエーションや疑問に対する答えが示されている。
・第2回目受診までの期間はどうするか?
→何が何でも1週間後 良くなったら中止とか、軽快したら弱い薬をという中途半端な支持は一切出さない
同じようにやってうまくいくかは自分のキャラクター次第だとは思うけど、面白い本なので皮膚科診療に携わる人は一度は目を通すことをオススメする。
電子版もあるようだ。
まとめ
今回は外用指導に役立つ教科書を紹介した。
こういう分野はエビデンスよりも経験値が重要なのだけど、皮膚科の教科書には経験知が書かれたものが少なく、とても貴重である。
他にもいろいろな皮膚科教科書を紹介しているので興味のあるかたはどうぞ。
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