皮膚科ではちゃんと薬を使っていない患者が多い印象があり、それがドクターショッピングの原因にもなっている。
実際自分が軟膏を塗るときも毎日は塗らないことが多い…。
その印象が正しいのか、「患者がホントに薬を使っているか」のデータをまとめてみた。
皮膚科患者の薬剤使用率について
「塗り薬を使用したか」がわかる電子チップ(MEMS:medication event monitoring system)があるしい。
このチップを使えば、チューブから軟膏を出したら記録されて、本当に外用しているのかがわかる。
これを使ったいくつかの研究がある。
内服と外用の使用率比較
重症の手湿疹患者の薬剤使用率(内服外用併用)
・内服⇒96%(3週間後)
・外用⇒64%(3週間後)
(J Am Acad Dermatol. 2006; 54(Suppl) : S235-6.)
内服と外用の使用状況を調べると、外用のほうが断然悪く、3週間目では4割の患者が塗っていない。
自己申告と実際の使用率とのズレ
自己申告と実際の使用率との比較(乾癬患者)
・自己申告⇒90%(2ヵ月後)
・実際の使用⇒51%(2ヵ月後)
(J Am Acad Dermatol. 2004; 51(2): 212-6)
自己申告では9割が塗っていると答えているが、2か月たつと半分の患者が外用をやめてしまっている。
これを見ると患者自身に塗っているかを聞いてもあまり意味がない。
「ちゃんと外用していない患者が多い」という印象を裏付ける結果である。
皮膚科患者のアドヒアランス
皮膚疾患は治療のアドヒアランス(コンプライアンス)が低いと思う。
アドヒアランスとは
患者が積極的に治療へと取り組む姿勢
MMAS-8というアドヒアランスの指標がある。
患者アンケートによる自己評価式の服薬・アドヒアランス尺度である。
MMAS-8スコア
- 0-5点(低アドヒアランス)
- 6-7点(中アドヒアランス)
- 8点(高アドヒアランス)
単純比較はできないと思うが、MMAS-8を使ったいくつかの研究を比べてみると。
アドヒアランスが低い患者の割合
1)高血圧:33%
2)蕁麻疹(内服):65.4%
3)アトピー (外用):76.9%
- Journal of Epidemiology. 2014; 24(2): 132
- J Dermatol. 2015;42(11):1078
- J Dermatol Sci. 2015;79(3):279
皮膚科患者は外用だけでなくて、内服の服薬状況もよろしくないようだ。
皮膚科診療で大事なこと
自分が患者の立場になったとしても同じような結果になると思う。
こうなってくると診断よりも、どうやって薬を使ってもらうかの方が大事になってくる。
「混合軟膏」や「外用ローテーション」など色々な工夫が必要である。
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