「未来食堂」という、お金がない人のためにタダ券を配布している面白い飲食店がある。
これだけ聞くと、一見ボランディア精神に溢れた食堂のようである。
しかしその実態は異なっている。
店長の小林せかいさんは元IBMのエンジニア。
未来食堂は彼女の経験が遺憾なく発揮された理系な飲食店なのである。
ポイントは「飲食業界のオープンソース化」と「飲食業界のシステム化」。
今回は店の開業までを描いた書籍から、この飲食店について紹介する。
①飲食業界のオープンソース化
IT業界にはオープンソースソフトウェアという概念がある。
オープンソースとはネット上で公開されている無料のプログラムで、誰でも使うことができ、自由に改変することもできる。
そして利用者が行った改修・改善は開発元へ還元され、アップデートの際はその内容が反映される。
つまり多くの人が自由に利用することによって、どんどん良いものになっていくのである。
このオープンソースの概念を飲食店業界に持ち込もうというのが小林さんの考え。
飲食店業界は不透明でクローズドな世界。
知識が隠蔽され開業コンサルタントが暴利を貪っている。
その知識をオープンにしてシェアすることによって、より飲食業界が発展するのではないか。
そう考えた彼女は、なんと事業計画書や業務マニュアル、店の売上まで公開しているのである。
さらに開業までの経過はブログに詳細に書かれている。
クリニック開業でもこのような取り組みがあれば面白いかもしれない。
②飲食業界のシステム化
また小林さんはITシステム設計の考えかたを持ち込み、非効率的な飲食業界をいかにシステム化できるかにチャレンジしている。
業務から属人性を除いてタスク化する。
リーンスタートアップでPDCAサイクルを回し業務改善する。
この取り組みも非常に面白い。
彼女は開業前に、個人店からチェーン店まで様々な飲食店でアルバイトをして、色々な方法を吸収したそうだ。
調理の技術だけではなく、オペレーションや厨房設計、人材育成法など。
その中で一番参考になったのはサイゼリアなのだという。
サイゼリアのオペレーションの特徴は2つある。
- 作業の単純化とマニュアル化
- スタッフの多能工化
作業の単純化とマニュアル化
まず一つ目は作業の単純化とマニュアル化である。
キッチンは包丁を使う必要がないように作業を単純化。一人分ずつ小分けにされた材料が店舗に届き、皿に盛るだけで完成する。
さらにテーブルの拭き方まで「布巾を左右に4回往復させる」などマニュアル化。
どんな人間でも一定のクオリティの仕事ができるように標準化されているそうだ。
スタッフの多能工化
2つ目はスタッフの多能工化。
通常のファミレスでは、キッチンとフロアで人員が別れている。
そのためフロアスタッフの人手が足りなくなっても、キッチンスタッフは手伝いに行けない。
ところがサイゼリアでは誰でも両方をこなせるようになっているそうだ。
普通ならフロアのスタッフにキッチン作業を覚え込ませるのは難しいが、作業が単純化・マニュアル化されているため可能になるのだ。
これで効率よく人員を配置できるようになり、少人数でも仕事をさばけるようになっている。
このような徹底的した業務のシステム化は、少人数でクリニックを運営する上でも役立つだろう。
また開業前に色々なアルバイトを行ってノウハウを吸収することは、クリニック開業でも必要かもしれないない。
まとめ
クリニック開業も不透明な業界である。
知識が隠蔽されコンサルタントが暴利を貪っている。
クリニック開業をオープンソース化するという取り組みがあれば面白そうである。
また開業前のアルバイトや業務のシステム化も役に立ちそうだ。
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